第20話

クラス分け試験。王立学園への入学は義務なので入学試験なんてものはなく、入学後のこの試験でクラスが分けられる。


「では、始め!」

号令と共に皆が一斉に問題冊子をめくる。


こつこつこつ。

机とペンがぶつかる音だけが響く。



試験の内容は4つ。うち2つは記述式、2つは実技だ。


1つ目は基礎科目。外国語、数学、歴史、地理の4科目だ。

記述のもう1つは魔術基礎。


この国の貴族の誇りは魔術が使えること。もちろん平民でも使えないことはないが、第1、第2階梯の地味な生活魔法くらいだ。第3階梯以上、攻撃などの派手な魔法は貴族の特権である。


故に学園も、魔術に関しては他の教科の倍くらい力を入れている。そのため他の基礎科目と分けてテストを行うのだ。


実技は魔術と武術。

なお武術は、魔術を使わないという制限の範囲内ならば剣でも弓でも槍でも、素手でも構わない。武術全般で闘う。



止め、の合図でペンを置く。基礎科目は手応えあり。順調な滑り出しだ。

それから魔術の方も難なくクリア。



問題は実技試験だ。自分をどう見せるか、そして魅せるか。


上級の魔法で攻撃力をアピールしても良し、美しい魔法で芸術性を見せるも良しだ。要するに自由競技である。


ある意味、ここで人間性を見られると言っても良い。



会場である、学園の闘技場に移動する。


闘技場は観客席が円状に並び、その下にフィールドがある。

今日は試験のため、魔術を当てる的が均等な間隔で並べられていた。


緊張をほぐすためにとある文字--何と読むか忘れた--を3回書いて飲み込む、というおまじないをしていると、遠くでアルの名前が聞こえた。


自分の手のひらから声のした方に視線を移動すると、確かにアルがいた。

アルも子爵家次男で、僕と同い年なので今年入学だ。


さて、我が弟弟子おとうとでしはどんな技を披露するのだろうか。


アルが意識を集中する。


一瞬、時が止まったように静かになる。


凍てつけグレイシア


きんっと金属がぶつかったような音がして、彼の周りが一面、冬の湖のように凍りつく。的も一緒に氷漬けにされた。


炎よイグニス


作り出した氷を外側から炎が溶かして行く。氷が全て溶けると、炎が的を焼き尽くした。


なるほど、彼は芸術点を狙ったようだ。

ならばこちらも。


俺の番が来て名前を呼ばれる。

「はい」


雫よロゼ


会場にいくつもの水滴が現れる。


彩れコローレ


水滴に色がつく。


ローガン先生は虹のように様々な色で彩っていたが、俺などはまだまだなので全て同じ色にしかできない。


翡翠のような緑色になった雫一つ一つに、魔力を込めて操作する。


頭上に集め、水滴のまま一回転させたら一つの大きな水球を作る。


魔力によって放たれた大きな水球が、的に当たって弾けた。


おお、と感心したような声を出し、審判が記録する。

…ここで拍手が起こらないのが寂しい。まあ、試験なので仕方ないが。



※P.S.

親切な読者様のアドバイスに従い修正してみたところ、正しくルビをふることができました!

ご協力くださりありがとうございます。

2024/9/19 18:54

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