学園編(仮)

第17話

今日は学園の入学式だ。満開の桜が舞い散る中を進んでいく。男女それぞれ制服を着ての初登校だ。


ちなみに初めてこの制服を見た時、なーんか見たことあるなー、と思っていたら前世の若い子たちが着ていたやつにそっくりだった。


詰襟じゃなく、ブレザーにネクタイの制服。

周りを見た感じ、女子もブレザーばかりだ。


「っ!」

また頭痛が…


アル、アルフレッドが顔を覗き込んで来るが、いつものやつだから心配するなと言っておく。


俺の家族や近しい人たちは、俺が頭痛持ちであることは承知なので「いつものやつ」で通じるのだ。


脳裏に【セーラー服】を来た俺の前世の姿が過ぎる。続いて街中でたむろする女子高生。

ああ、頭痛の原因はこれか。


前世の俺(私)が着ることのなかったブレザーの制服。珍しく定時で帰れた日はそこらの女子高生がブレザーを着て歩いているのを見た。

またしても前世のものが出てきた。もしかしてここ、異世界と言いつつ並行世界の日本だったりするのか?



会場に着くとすごい人が集まっていた。同伴一名までオッケーらしいので、後ろにご婦人方がたくさんいる。中には男性もちらほら。生徒たちは皆前に集まっているようだ。


「失礼、シリル・アークライト様でしょうか」

「ああ」


アルと分かれて侍従に案内される。序列順なので一番前の、ユリウス第一王子殿下の隣だ。殿下は新入生代表の挨拶があるのでまだいないが。一番端の席を空けて座る。


今日は母上も父上もお忙しいので来れない。アルも今年入学するので一緒に来たが、親は来ていないらしい。せめて写真だけは撮って帰ろうと思う。


「…」

近くに誰も知り合いがいない。幸いなことに会場の雰囲気はゆるい感じなので緊張せずには済むが、話し相手がいないとそわそわしてしまう。


(とりあえず隣の人に…)


そう思って隣を見ると、こちらはガチガチに緊張していた。背筋をぴんと伸ばして一点を見つめている。


前世では見たこともない緑色の髪に、これまた綺麗な深い緑の瞳。強張っているからか、意志の強そうな顔立ちをしている。

名前は確か…オスカー・アーウィン。近衛騎士団団長の息子だ。


話しかけるか否か、迷うな…


一点を見つめるのみで全く視線をよこさないのは話しかけるな、という意思の表れなのか、ただの緊張からか。


後者だったら良いものの、話しかけて嫌な顔をされたらと思うと、なかなか話しかけられない。


声をかけようとしては思い止まりを繰り返して口をぱくぱくさせていると、ようやく彼の目がこちらに向いた。


ジロリ、と睨まれたような気がした。いや、睨んではいないのだろうけども、首は動かさず目だけ動くのがちょっと怖かった。


だが、ここで怯んでは行けない。僕は公爵家の人間だ。コミュ障なのがバレてはいけないのだ。紳士教育で培った他所行きスマイルで対応する。


「同学年だね、よろしく」

「どうも」


同学年って!同学年だねって!!見れば分かるだろ!!同じタイミングで入学してんだから!普通そこは同じクラスだね、とかだろうが!


またいらんことを口走ってしまった。うちに帰って猛省しよう…というか現在進行形でしている。もちろん笑みは崩さないまま。


アーウィンは身長差があるからか、無愛想だと威圧感が増して見える。あと、緊張ですごいオーラが出ている…


「今日は父君か母君が来ているのか?」

「…母が来ています」

「ふうん…」

「…」

「…」


あ、まずい、沈黙になっている。何か会話、何か会話…!

僕が慌てて話題を探していると、わざとらしい咳払いが飛んできた。

おお、ナイスタイミング。



※第1章はプロローグという名の主要人物紹介でした。今話から第二章です。

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