第16話

最初に前世の記憶がよみがえってから、はや3年。段々と記憶がはっきりしてきた。


淡いピンク色の花を見ては前世の【桜】を思い出し、緑と黒の縞模様の丸い果物を見ては【すいか】を思い出し、秋の【紅葉もみじ】と【銀杏いちょう】、冬には【そば】らしき物まで食べた。


その度に頭痛がして大変だった。というのも、前世の記憶が戻る時は大抵頭痛がするのである。

どうにかならんのか、このシステム。おかげで身の回りの人に毎回心配をかけているのだが。


なぜこんなにも前世の物が揃っているのか不思議だが、今の俺には知る由もない。

せめてここがどういう世界なのか分かれば良いのだが。



ミルドレッド嬢との関係は未だに続いている。このまま行くと幼馴染、というものになりそうだ。


もちろんレベッカ嬢とも月一回は会っている。相変わらずお茶の話が多くなってしまうが、そこから発展してお抱えの商会の話や好みのお茶菓子の話もするので、婚約者同士の会話としては何とか及第点に届くだろう。呼び捨ては未だできず、だが。


魔術の面白さに目覚めてからは魔術書を読み漁るようになった。魔術の師であるローガン先生にも付き合ってもらって、魔力の扱いも随分と上達した。

朝は剣術、昼は座学、夕方から夜にかけては魔術。このサイクルをずっと繰り返している。


13歳になったので、僕はもうすぐ学園に入学する。


この国の貴族は13歳から3年間、王立学園に通うことが義務付けられている。

ここで一般教養と武術や魔術を学び、卒業後はそれぞれの進路に応じて、文官の補佐に着くか、アカデミーに行くか、士官学校に行くかなどを決めるのだ。


学園では次期当主とそれ以外でコースが分かれており、次期当主である長男−−もしくは稀に長女−−のほうが科目数が多くなっている。


僕は次期当主コースだ。未来の王とその側近として、ユリウス第一王子殿下と行動を共にすることになる。


ちなみに、次期当主コースというのは僕が勝手にそう呼んでいるだけで、実際はαコースとβコースというらしい。

いやアルファとベータって。ギリシャ数字じゃん。

と、思った瞬間にまた頭痛がした。本当、どうにかしてくれ。


前世の【らのべ】なるものによると、異世界には往々にしてギリシャ文字があるのだとか。

そのうちデルタとかオミクロンとか出てきそうだな…



※エピローグです。急に題名が付くのも不自然な気がしたのでここに書いておきます…

デルタとオミクロンはご存じ、あのウイルスから取りました。今の流行りはオミクロン株かな?


※よく考えたら6年って長くない?と思ったので、王立学園に通う期間を6年間→3年間にしました。

2024/10/17 18:34

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