第15話

「……」

朝、剣と同様に重い体を引きずって外へ出る。

昨日はあまり寝られなかった。何かやらかした日は大抵寝付けないのだ、僕は。


ストレッチをしたら剣をずるずる引きずって庭の広いところまで来る。

闘技場は離れにあって、本邸からはそれなりに距離がある。いつもは準備運動がてら走っていたが、今日はそんな気分にはなれない。庭で素振りだけで済ませようと思う。


剣の素振りが終わったら次は座学。カーター先生は勤務時間を過ぎるとすぐに帰ってしまうので、授業中にどんどん質問する。


「君は質問が多いな…」

「カーター先生のお時間を取らせる訳にはまいりませんから」


お前が質疑応答の時間を取らないからだよ!

にっこりと微笑んで最大限の嫌味をかます。


「時間に厳しいのは良い事だ。君は将来良い宰相になれるだろうな」

「お褒めに預かり光栄です」


うわあ、男爵家のおじさんとこんな嫌味のやりとりすると思わなかったよ。

アルフレッド、目が死んでるよ。僕もだけど。


午後、お茶を飲んで眠気を覚ましたら魔術の勉強だ。


僕たちの魔術の師はラッセル・ローガン先生。こっちは先生、剣の方はブラッドリー師匠、と呼び方を変えている。

ローガン先生はアカデミーで教鞭をとっている現役の教師だ。年齢は『ひ・み・つ♡』とのことだが見た目は70歳くらい。だいぶおじいちゃんだ。


それでも普通に背筋を伸ばして歩いているし、いたって健康体だし、どうなってんだこの人。


「先生、魔力に波長があるって本当ですか?」

アルフレッドが聞いた。

「本当じゃよ。例えば儂の放つ魔力と坊ちゃんの放つ魔力は波長が違うが、旦那様の魔力の波長は坊ちゃんに近いな」


へえ、と二人感心する。

「家族だから、でしょうか」

「正解じゃ。魔力は血によって遺伝する。血縁があれば魔力の波長も似るのですじゃ」


「魔力の波長を変えることはできますか?」

「できないこともないが…相当な訓練が必要じゃぞ?」


アルフレッドと目を合わせる。彼のキラキラした瞳に、同じく目をキラキラさせた僕が映った。


「「やってみたいです、教えてくださいっ!」」

目を輝かせる僕たちに、先生はちょっと引き気味に了承してくれた。


「まず、魔力の波長は血だけでなく属性によっても変わる。それを感覚で覚えることから始めよう」


先生は僕に、火属性、水属性、地属性、風属性と順に魔力を流していく。

確かに、違う。暖かさというのだろうか、魔力を流し込まれた時の感覚が。

だが、僅かな違いだ。素人が瞬間的に判断するのは難しい。


完全に見分け…感じ分けられるようになるまで相当な年月かかるらしい。一生をそれに注ぎ込んでも足りないくらい。


「魔術の熟練者でも波長まで読み取るのは至難の業じゃ。出来なくても気を落とすでないぞ」


まあ、興味はあるが、出来たらラッキー、くらいの気持ちでいよう。期待しすぎは良くないからな。



※熱で寝込んでいて遅れました。コロナ陽性でした、、人生初コロナです…

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