第14話
家に帰るとすぐさま自室に戻ってベッドに潜り、深く長いため息をつく。
今日の自分の行動を振り返る。レベッカ嬢に意地悪な言い方をしてしまった。もっとちゃんと謝っておくべきだった。
強制されるような形で当主になったら可哀想?強制しているのは僕の方じゃないか。彼女の気持ちも聞かないで。
自分勝手に相手をおし測って「僕が当主になろう」なんて、ただの自己満足だ。気遣いなんて綺麗なもんじゃない。
そもそもあれは迷っているわけではないのかもしれないのだ。僕が聞いた時、彼女ははっきりと肯定はしなかった。せっかくのレベッカ嬢の決意が僕のせいで揺らいでしまったかもしれない。
ああ、嫌われた嫌われた、絶対嫌われた…!こんなの、嫌われて然るべきだ。来月レベッカ嬢にどんな顔をして会えばいい。
「ああ、いっそ死にたい…」
「めったなことで死にたいなどと言うもんじゃありませんよ〜、坊ちゃん」
「…アルフレッド」
能天気な声に、枕から顔を上げる。そういえばこいつがいたんだった。
「…一人にしてくれ」
泣きそうな顔を見られないようまた枕に顔を埋める。
いつもこうだ。いつも、事が終わってから後悔する。あの時こうしておけば良かった、こう言えば良かった、と。
貴族というのは相手に好感があってもなくても笑顔でいるものだ。口ではおべっかを使いながら、腹の内で何を考えているかは分からない。
レベッカ嬢だって、嫌な顔はしていなくても、どうせ心の中では僕のことを面倒なやつだとか思っているんだ。今日のことでより一層嫌われた気がする。
「何があったんです?どうせまたいつものネガティブ思考でしょ?」
声がすぐ横に来る。いつものように腕を組んで困った顔で僕を見下ろしているのだろう。
「どうせって何だ、こっちは真剣に悩んでるんだ!」
顔を伏せたまま叫ぶ。
「そんなにいちいち気にしていたらキリがないですよ」
「お前には分からないよ…」
ベッドに座り直してアルフレッドと向かい合う。
「ええ、分かりません」
はっきり言うな。
「はっきり言うなよ。少しは慰めてくれたっていいだろ」
「分からないものは分からないんです」
アルフレッドはつんとして言った。
「…そうかよ」
はああ。会話が途切れてまたため息をつく。後ろに倒れ込むと、弾性力の強いベッドに押し返されて体が上下に揺れた。
「…話聞きましょうか?」
「いや、いい」
顔を背ける。話したらもっと気が滅入る気がする。
「困ったなあ、僕、坊ちゃんに構ってもらえないとやる事がないなあ」
急に芝居がかった口調になったアルフレッドを横目で見る。
「…皿洗いでもすれば?」
「僕は坊ちゃんの従者なのになあ、主のそばでお支えしないと仕事をしてないことになってしまうなあ?」
腕を組みながらちらり、とこちら窺うアルフレッド。
「…分かった、話すよ」
※シリル君はコミュ障です。…アニメのタイトルみたいだな。
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