第7話
急いで着替えて訓練場へと出る。
普段着より伸縮性があって動きやすい服装だ。
師匠の名はライオネル・ブラッドリー。
二つ名は「剣豪」である。剣聖の次に強い人ということだ。
男らしく鍛え上げられた体つき。放つ覇気は百戦錬磨を物語る。
剣聖様は弟子を取らない主義らしく、僕のような子供に稽古をつけるのは剣豪かそれ以外の騎士の役割になっている。
きちんと準備体操を済ませたら、まずは型の練習だ。
すーっと息を吸ってから短く吐き、地面を蹴る。
相手との間合いを詰める。
同時に鞘から剣を抜く。
相手の左脇腹から右肩にかけて切り上げる。
居合術だ。
後ろでころん、と音がして丸太が転がった。
振り返って確認すると、斜めに割れた丸太の下半分だけが残っていた。
「ふむ、前回よりも良い剣筋だ」
「ありがとうございます」
それから手本を見せていただき、直すところを明確にしてもう一度。さらに指摘された部分を調整していく。
何度も繰り返し、完成された型の状態に持っていく。
「お、今のは完成に近かったぞ、もう一度やってみなされ」
「はいっ!」
良いと言われた時の体の感覚、素早さ、太刀筋を覚えて意識する。
スパッといい音がして丸太が切れた。初めよりも切り口が綺麗な直線だ。
「完璧だ。今の感覚を忘れないように」
それから何度か繰り返して技を体に刷り込ませる。
「ではもう一つ技をお教えしよう」
そう言うと師匠は剣を構える。
体の前から顔の右側に剣を持ってくる。
師匠が剣を前に突き出すと突風が吹いた。
「この時、体は剣軸と反対方向に進める。相手のカウンターに備えるためだ」
なるほど、カウンターに備えるのも大事なのか。
何度も師匠の手本を見ては真似をして、修正を繰り返す。
これも合格が出るまで練習し、習得する。
最後は模擬戦だ。
師匠の木剣を受け止め、そのまま踏み込んで切り上げる。
案の定カウンターが返ってくるので腕を伸ばして受け止める。
僕の方が背が低いので力では押し負ける。
素早く手首を回して切先を外すと、その勢いで突きが来るので体を横移動させて避ける。
そして剣を切り落とそうと振りかぶった時、足が地面から離れた。
「っ!?」
前傾していた僕は重力に逆らえず倒れ込んだ。
「足元がお留守になっているぞ」
上から剣先を突きつけられて降参した。
「ま、参りました…」
「今日はここまで。鍛錬を怠りませんよう」
「ありがとうございました!」
敬礼をして師匠の背中を見送る。木剣を片付けに行くその背中が逞しい。
普段は気さくなおじ様といった感じだが剣の腕は本物だ。
やっぱり師匠はかっこいいな。
※ドイツ剣術について調べていたら遅くなりました。
世界観が英語なのに剣術だけドイツなのは…まあ同じゲルマン系ということで許してくださいm(_ _)m
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