第4話

ミルドレッド・カーマイケル公爵令嬢は、プラチナブロンドの髪にマリンブルーの瞳で、可愛いというよりは綺麗な顔立ちなので年齢より大人びて見える。


カーマイケル嬢とセシリアは劇場で知り合ったそうだ。

というのも、セシリアは母上に連れられて演劇を見に行ってからハマってしまったようで、よく一人で見に行っているのだ。振り回される従者は苦労しているだろうな。


しかも7歳のくせに気取って恋愛ものばかり見ているらしい。諸事情で結ばれない二人の切ない恋の物語、精霊と精霊使いの淡い恋など。

僕には面白いのかどうかよく分からない。


「それでね、毎回席が隣だったの!すごい偶然だと思わない?」

確かに毎回隣なんてすごい。


カーマイケル嬢もクスクスと笑っている。

「セシリアはいつ見ても泣いているから分かりやすいのよね」


僕の妹はそんなに涙もろいのか。


「ちょっとミリー、それは言わないでよ!」

セシリアが慌てているのを見るに本当らしい。照れるセシリアが可愛らしくてつい笑みが漏れる。


「カーマイケル嬢も、演劇がお好きなんですか?」

「ミルドレッドで構いません、わたくしもシリル様とお呼びしても?」

「はい、もちろん」


ミルドレッド嬢は、優雅に紅茶を一口すすってから答える。

「演劇はわたくしも嗜んでおりますわ。

特に恋愛ものですの。決して結ばれることの叶わない二人の禁断の恋…だからこそ、切なく美しいのです…」

そう言って頬を赤らめる姿は年相応だ。あ、でも恋愛ものに興味があるのは年相応ではない気が…まあいいか。


「僕にはよく分かりませんね」

と肩をすくめて苦笑する。


「シリル様も一度見てみてくださいな、きっと心に響くと思います」

「じゃあじゃあ、今度はおにいさまもミリーも一緒に三人で行きましょう!」


確かに、一度見てみるのもいい勉強になるかもしれない。

「わかった、時間が作れないか聞いてみるよ」

「はい!」

やったあ、とはしゃぐセシリアを見て、元気だなあと思う。


それとは対照的に、落ち着いているミルドレッド嬢に視線を向ける。

「ミルドレッド嬢も、ご一緒させていただくかもしれないので、その時はよろしくお願いします」

「こちらこそ、お会いするのを楽しみにしております。ぜひ感想をお聞かせくださいね」

ミルドレッド嬢はそう言って大人っぽく微笑んだ。

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