第3話
「大丈夫ですか?坊ちゃん」
アルフレッドが心配そうにこちらを見ている。
でも、自分が転生者だなんて、話して良いのかわからない。信じてもらえないかもしれないし、僕もまだ信じられていない。
「ごめんアルフレッド、少し、頭痛がしただけ。今は大丈夫だよ」
取り敢えず今日は…あれ、今日って何をする予定だったっけ?
記憶が混乱している。
「今日はセシリア様のお友達とお茶会でしょう?」
忘れたんですか、だから早く起こしたのに。と呆れ顔で言う。よく見ると可愛いな、と思った。
ん?可愛い?男なのに?
違和感はあったがまあいいか、と流してしまった。
それより早く着替えないと遅れる。
早歩きでテラスに出る。貴族たる者、悠然としているべきなのでこういうときに走ったりはしない。顔が見えると、先に来ていた二人が立ち上がる。
「すみません、お待たせしました」
「ほんとですよ、おにいさま。女性を待たせるなんて何を考えているのよ!」
妹のセシリアがぷんぷんと頬を膨らませる。
「いいの、セシリア。私は怒ってないし、それに、女子会できて楽しかったでしょ?」
「それでもダメよ。今日はおにいさまを紹介するために来てもらったんだから」
そう。今日は僕と、セシリアのお友達、ミルドレッド・カーマイケル公爵令嬢との顔合わせを兼ねたお茶会。
ギリギリでも駄目なのに遅れるなんて論外だ。5分前に着くのが理想なのに。
ん?貴族社会にそんな決まりあったっけ?…まあいいか。
カーマイケル嬢は、待たせた僕に怒らないでいてくれる。
カーマイケル嬢はセシリアと同い年で7歳。10歳の僕よりしっかりしている。
「本当に、すみませんでした…」
気持ちを切り替えて挨拶する。
「では改めて。初めまして、セシリアの兄、シリル・アークライトです。よろしくお願いします」
胸に手を当てて腰を折る。
「ミルドレッド・カーマイケルです。こちらこそ、よろしくお願いします」
一同が座ると、侍女がお菓子とお茶を用意した。
「いただきます」
手を合わせてそう言うと、セシリアとカーマイケル嬢が不思議そうな顔で見てくる。
「…おにいさま、それ、何ですの?」
そう言われて気づく。無意識にやっていた。前世の感覚なのかもしれない。
「わ、からない。けど、なんだろう、神に感謝を、みたいな感じかな」
知らないはずなのに、何故か言葉がすらすらと出てくる。
ああ、懐かしいな。家族みんなで食卓を囲んで…って、え?懐かしい?え?え?
「お兄様!」
呼ばれてハッと顔を上げる。
「どうしたんですか?なんか変ですよ、今日」
そう、なんか変だ。突然アルフレッドのことを可愛いと思ったり、食べる前に手を合わせたり。
「ちょっと、色々、あって」
色々と言って誤魔化す。
もしかして、前世の記憶が原因?
僕が思い出したのはほんの一部、死ぬ間際だけだ。前世の私に刻み込まれた感覚が戻って来ているのかもしれない。
※シリルは徐々に前世の記憶を思い出して人格が統合される予定です。
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