第2話
私、28歳、会社員。
なんとなくまあまあな大学に行って、なんとなくそこそこの企業に就職して、なんとなく仕事をして。
そのなんとなく、がいけなかった。
この会社、ブラックだ。と気づいた時にはもう遅く、毎日終電ギリギリまで仕事に追われる日々。
残業手当は一応、一応出ているが絶対に額が足りていない。だが上司に文句を言おうものなら即怒鳴りつけられ…胃薬必須だわこれ。
午前1時を回った時計を見て、ああ、タクシー代で飲めたのに…と絶望することも多々あり。
ある日仕事をしている最中に急激に頭がぼんやりしてきたと思ったら、デスクに倒れている自分が見えた。
ああ、これ死んだな。
くそう、死ぬ前に一杯飲みたかった!!
「…ちゃん、坊ちゃん」
声が、聞こえる。
「起きてください、坊ちゃん」
五月蝿いなあ。今起きるよ。
ゆっくりと重い瞼を開ける。目の前にぼんやりと、綺麗な顔の少年が浮かび上がる。
「あれ、そういえば私仕事してて…」
ハッと口を手で覆う。
私?私って何?
僕は、僕だ。シリル・アークライト。そして目の前の少年はアルフレッド。ここは僕の部屋で。
うん、全部分かる。分かるんだけど、変な感じだ。僕は、私でもある。そんな気がする。
「…坊ちゃん?」
そういえばさっき、夢を見た。女の人の、死ぬ前みたいな…
「っ!」
頭が、痛くなる。夢で見た女の人の情報が、入って来る。
ブラック企業勤め、怖い上司。酒が生き甲斐で…
ああ、そう、そうだ。思い出した。
僕は、転生者だ。
(私は、転生者だ。)
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