第9話
「立花さん、この女が私たちに突っかかってきたんです」
風花の襟をつかみながら女がそう言い放つ
「まあ、落ち着きなさい。話はきちんとあとから聞くから。まず、みんなけがはないわね」
風花と3人に対してそう問いかけ、周りの様子を一通り見渡す
「騒ぎになるとこの後面倒だから、とりあえずここを離れましょう。」
僕は、少し嫌そうな顔をしながら、なんとかついて行かずに済む方法はないかと僕は考えていた。
「大丈夫よ、私たちはあなたたちに危害を加えることは絶対にしないし、もしかしたら何かしらの力になれるかもしれないわよ」
僕たちは、現状どうすることもできないような状況に陥ってしまっているため、彼女について行くしか選択肢はなかった。
「わかりました、ついて行きます。ただ、警察に通報したり、両親や学校に報告するようなことは絶対にしないでください」
この条件だけは何があっても譲ることはできない
「わかったわ、それでいいわ」
僕たちはただ立花の後ろをついて歩きだした。風花は僕の背中に隠れるようにしながらただ黙ってついてきていた。
何本か路地を入ったところを僕たちはただ会話もなく歩き続けた。周りには大道りのようにはにぎわっておらず閑散としていた。時々すれ違う人も、華やかな服装ではなく少し小汚いような姿の人ばかりであった。先ほどの場所から
それほど離れていないにも関わらずこれほど違うことに驚きと不気味さを僕は感じていた。
「ここよ」
立花たちはキャバクラやパブが入っている薄汚い雑居ビルの前で立ち止まった。
僕は背中に冷汗をかきながら風花の手を握りしめながら立花の後についてビルの中へ入る覚悟を決めた。
中は、薄暗くカウンター席とテーブル席が2つほどある小さな店であり、カウンターには50台ぐらいのド派手な赤髪にパーマをかけた女性がいた。
「あら、お帰り立花ちゃんたち。後ろの子たちはお客さんとしては若すぎるみたいだけど」
「違いますよ、ちょっとこの子たちとトラブルになっちゃって。どうしようもなくなって連れてきたの」
立花はそう大まかな状況を説明する。
「だから、ちょっとだけ場所借りていい?」
「いいわよ、今ちょうどお客さんもいないし」
「ありがと、じゃあみんあそこの席に座りなさい」
立花は入り口の一番近くにある机の席を指さしながら僕たちが着席することを促す。
僕と風花は隣合わせになるように座り、反対側には先ほどの3人組が席に着いた。
「はい、どうぞ」
立花は席に座っている全員に飲み物を出した
「みんな、未成年だからお酒じゃないから安心してね」
飲み物はおそらくミルクセーキであろう
「じゃあ、何があったのか聞かせてね」
立花がさっそく本題へと切り込む
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