失恋慰めの話

@uma_sanca

ただそれだけのこと

「うわああぁん!!!」

ユミは大声で泣きながらビールを飲み干し、ジョッキグラスをガシャンと音を立て置いた。

「急にパーティなんか計画してなんなんですか、その態度は?」

アミコは梅酒を少し飲み、落ち着いた様子で話す。

ここはアミコの部屋。1Kひとりぐらしの普通のアパート。今日はユミの失恋記念パーティーである。

「いいよなぁ!!アミコは!優しくて!こんなやつを幼馴染の親友において!恋の味を知ろうとせず!!つい最近まで留学して?交友関係広げてさぁ!」

ユミは叫ぶ。

「なんで褒めてるんですか。ここあんまり防音効いていないのであんまり音を立てるのやめたほうがいいですよ。いつものユミちゃんらしくありません!」

「そうだよ!!!今は怒りに満ちててるからなぁ!!!!死ね!元カレ!タイプの波長の合う女と一緒に天寿を全うしろ!女を乗り換え乗り換えやがってよぉ!!!女の興味をみず性器だけで喉傷つけて、傷跡残しがってよぉ!!」

「それは彼氏を見る目がないのでは?」

泣きながら答える。

「はじめてだったぁもん。両思いだったし。ヤリモクだとしても彼氏いるって実績でかかったもん。刹那的にでも恋したかったもん。」

「実績って答えちゃだめですよ。で、どうでしたか刹那的な恋の味は。」

「自分が弱くなっちまった。誰かに甘えなきゃいけない身体になっちまった。毎回のデートもホテルデートばっかだったけど、好きって言われるたびおかしくなりそうだった。ずっと頭ンなかアイツでいっぱいだった。今思えばファッキンアバズレクソ男だったのに。死ね。納得した女と一緒に。」

ユミは中指を立てる。

「流石に態度が悪すぎます。というかファッキンが本当のファッキンですね。確かに絶対的に甘えられる相手がいるのはいなくなったときに苦しいですよね。よちよちなでてやりましょう〜。」

「アミコ〜〜〜!この世で唯一の希望〜!!推し。ちゅき。」

「テンションが乱高下しすぎです。ぺしっ!」

「うぅ〜。」

「胃もストレスで縮んでてそこまで食べれないんでしょ?買ってきたものも枝豆とビール、味噌汁、胃薬と胃薬。なんで胃薬2つもあるんですか?」

「いっぱいあったほうが面白いと思ったから。こういう訳のわからない面白さが伝わらんのよ〜。何話しても『ふーん』とか『へー』ばっかりで!そのくせ自分のこととなるといっぱい喋って!エッチのときだけ優しくなって!クソ!」

「やっぱり違和感感じたタイミングで別れたほうが良かったと思いますよ。相手の気持ちを待つよりも。」

「過去はどうにもできねぇんだよ!ふぁ〜!」

「それに、あなたは一人の人に依存しすぎです。私もそういう傾向があるのでユミちゃんに頼ってしまってばかりですがぁ……。」

「そうだなぁ……。人に信頼を置くとなると、ついすぐ全部乗せしちゃって崩壊するもんなぁ……。」

「難しいですよね。私も頑張らなきゃなぁ……。ね?ユミちゃん?」

ユミの顔は真っ赤で寝息を立てていた。

「まったく……。起きてください!片付けしますよ!」

夜は静かに終わっていく。

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