第40話 崩壊へのカウントダウン
色白の女性の割り込みにより、面を食らう咲良たち。だが、そんな三人のことなど気に留めず、女性は男へと言葉をかける。その言葉を聞いて、「
「ぷー、
「あぁ、今度伝えておくよ」
「やっぱりオレと遊ばねぇか?」
肩を掴み、自分の恋人かのように抱きしめていく。
体に触れられた
その姿が少しだけ迫力的だったが、男は驚愕……するふりをして、
男は笑いながら、
それを見て、
「ウチが相手をしてやる。それでいいだろ!
最初のうちは人を殺めるかのような殺気を纏っていたが、どんどんと力弱くなっていく。
反抗的な
何かスイッチが入ったのか、男は抱いていた
「いいね! やっぱり、お前は最高だよ。約束は守ってくれるもんな! まだ吸ってるだろ? あの薬。お菓子に偽造して渡してあるからバレねぇ仕様だからよ」
そう言い、
舌まで絡ませるほどの濃厚な口づけ。だが、
数秒口づけを交わし、男は
とんでもないものを見せられた
終わりだ。どう言い訳して
「見境なくなるところがアナタの悪いところですよ。
逞しい男の声が屈強な男を抑制する。
その男性を見て色白の女は喜びの表情を見せた。
「
自分の遊び相手の男の名を呼び、抱きついていく。そして、「今日も面白い遊び教えてくれるんでしょ?」と、男に媚びるように甘い声を発した。
「大丈夫ですか?
「お見苦しいところをお見せしました。彼らの愚行をお許しください」
他の二人と雰囲気が違い、三人は彼には恐怖心を抱くことはなかった。
「ほら、
「なんでー」
「そうだよ」
二人は愚痴を溢してたが、「いいから下げなさい」と一言、言い放った途端に、二人は彼の言葉に従った。その瞬間だけは背筋が凍るような感覚を覚えた。
「それでは」
いつも通りの声色に戻り、短く言い放つ。その後、彼らはこの場を去って行ってしまう。その後ろに
「ま……」
「
届かない声だけが、街に響いていた。
*****
次の日、なんの気も無しに部活動へと足を運んだ
「どうしたの?」
「なんでもないよ。あっ! それと
口から出まかせを言ってしまう
彼女の
「そうなんだ……」
なんの疑いもなしに
あの児童養護施設での演奏が効いているのか、
技術も上がっているし、演奏を本当に楽しそうにやってもいる。だが、今の双子たちには児童養護施設で演奏した時とは違う感覚を覚えていた。
あの時の迫力がない。何か集中力に欠ける。
「やっぱり何かあった?」
「えっ!」
「ないじゃんよ。ないじゃん。ねぇ、明里?」
「そうよん。ないよん」
動揺を隠せていない二人の会話に
だが、肝心の質問をした
「それよりさ、やっぱりスタープロジェクト出ようよ! 私たちなら絶対優勝できるって!」
美月の言葉を聞いて双子は表情を曇らせた。
「ねっ! 絶対楽しいって!」
「
「
「なんでもない。それより、文化祭。頑張ろうね」
「うん……」
いつもの
この日もいつも通り練習をして帰宅した。かなり上達したと四人は感じられた。
*****
帰宅した
部室での双子の態度。
「やっぱり何かあったんじゃ……」
自分の知らないところで、何かとんでもないことが起きているのではないか。
そんな感情に支配されていき、
すぐに既読がつき、メッセージの返信が来た。
『何かあった?』
「体調崩したって聞いたから、大丈夫かなって思って」
『そうなんだ。ちょっと体だるいけど、なんとかなってるよ。しばらくは部室には顔出せないと思うけど、ごめんね』
「大丈夫だよ。しっかりと体調、治してね」
『ありがとう』
やりとりはなんの変哲のないもので終わったが、その後に
「こんな時に言うのもなんだけど、やっぱりスタープロジェクトでようよ! あれだけ最高の演奏ができたんだよ。絶対上手くいくって!」
児童養護施設での演奏を思い出す。あの演奏ができたなら絶対にスタープロジェクトでも通用する。
なぜなら、あれは過去最高と言ってもいいほどの演奏だったから。みんなの力が合わさり、人の心の奥底に届く演奏をできていたと思う。
だから、自分たちならできると
送られたメッセージに
『そうか……考えておくよ』
「ホント!」
『あぁ、それより文化祭頑張ろうな!』
「うん!」
それからしばらくメッセージをして、二人は楽しく会話をした。
*****
「
あれから一週間くらい経つが、
ただの風邪なら、もうすでに治っても良さそうだが……
「まぁ、急に悪化することもあるし、そんなに心配しなくてもいいんじゃないかな? それよりも、私たちは
「そうだね」
二人はパフォーマンスの波が激しいのが弱点だった。故に、昨日と違い、著しく演奏技術が落ちている二人を見て、
「
「うん、わかってるよ」
今までできていたことができなくなるのは、とても悔しいことだ。
二人は懸命にやっていくが、スランプに陥っているのかなかなか前のような演奏ができない。
「一旦休憩にしようか」
気合いの入りすぎている双子を見て、
「はい、これ」
「何が原因なんだろうん。前はできてたのに……」
「そうじゃん! 悔しいじゃん!」
「そういうこともあるよ。それよりも、文化祭で演奏する曲作ってきたんだけど、聞く?」
『スキノカタチ』。それが曲のタイトルだった。
コンセプトは、『好きなものと向き合うこと』。
心が苦しいが、手放せない。そんな感情を歌ったものだった。タイトルがカタカナなのも、その歪さを表現するためだった。
基本の音はポップ調だが、その中に悲しみや怖さなども組み込んである。
その曲は今、複雑な感情を抱えている
「いいと思うじゃん! さすが
「そうかなー」
「そうだよん。これで行こう!」
「じゃあ、早速練習しようか!」
その横にある
*****
「どういうこと!」
突然の知らせに、
「
担任は淡々と状況だけ説明して、授業へと戻っていく。
「っく、
「まぁ、あのビッチは退学して正解じゃね?」
「確かに。男とホテル行ってるところ私も見たし」
クラスメイトからあまりいい風に思われていなかった
むしろ、退学したこと自体を喜ぶものもいた。
「
メッセージをした時は、元気そうだった。だが、あれは
その
休み時間になる。
「
質問を聞いて、
「うん。一週間前、退部届を出しに来た。私はそれを受理した。本当のことを話せば良かったね。ごめん」
彼女のの言葉に
無言で教室を出ていく。その後ろ姿を見て、
「
と、
校内に設置されているベンチに
今までの思い出が一瞬で
気づけなかった。あれだけ楽しそうにしていた
よっぽどの理由があると思う。
「
悲しさと悔しさの感情が入り混じる。
そこからしばらくは涙を流し続けていた。周りの人など気にもせず。
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