第31話 邂逅
「あれ、
「もう学校来ないかと思ったよ」
「私はグレて非行少女に走ったかと思ったわ。ほら、あの退学になった子と連んでたでしょ?」
教室に入った途端に、ありもしない噂を口にするクラスメイトたち。
学校側には病気のことは伝えたが、本人の意向で生徒たちには黙っていてほしいとも伝えた。
だから、彼女が余命宣告をされた事を生徒たちは知らない。
「
彼女の秘密を知っているひとり──
「
「シー!」
「どうして?」
「他の生徒たちには知られたくない。ほら、あんまり仲良くないし、変に気を遣わせたくないし」
「
「そうかな?」
「そうだよ」
何事もなかったかのように、二人は語り合う。
だが、この時間一秒、一秒が
ダイヤモンドのように価値のあるものだ。
それは、命に限りがあると身近に感じられたから、初めて抱いた感情だが。
「授業始めるぞ」
担任の声と共に、皆が着席する。
放課後までいつもの日常が流れる。
二人は帰宅するために玄関へと向かい、玄関で自分の下駄箱を開ける。すると……
「なんだろうこれ?」
「さぁ?」
床に落ちた紙を拾う。二つ折りになっていたので、広げて確認すると、そこには『軽音楽部の部室に来て』とだけ簡素に書かれていた。
去年
思わぬ予定が入り、
その後ろ姿を、白髪の少女が見つめているとは知らず。
指定された部室に着いた
出会いから別れ。悲しみや挫折。いろいろなことがあり、楽しくも苦い思い出がこの場所にはある。
「しんみりしてんじゃねぇよ。今の
背後から声をかけれら、
「
「そんなこと……」
前はそんなことなかったのに、この声を聞くと胸が高鳴り、感情を抑えるのだけで必死になる。
声の主──
「さぁ? 私は
「私も心当たりはないかな?」
「そうか……でも、
「バンド関連だね」
「っく、俺たちも時間がねぇんだよ。あと一週間で文化祭だろ? 演奏する曲を作らなきゃいけないし、練習時間も必要だし……大した用事じゃなかったら、ゆるさねぇからな」
「悪かったねん!」
「そうそう。そこまで言わなくてもいいじゃん」
息の合った歩き方や喋り方。その声を聞いて、
「
「よっ! 半年ぶりかなん? 変わらないねん、みづっちは」
「そうそう。変わんないじゃんよ!」
部室だった部屋に入り、二人は並ぶ。
茶髪のストレートヘアにボーイッシュな見た目の
黒髪のお団子ヘアをしているのは
お互いに正反対で、
「呼び出してごめんねん」
「本当ごめんじゃんよ」
「そんなことないよ。久しぶりに会えて嬉しい」
「どうしたの?」
「『どうしたの?』じゃないだろ! あれだけ、犬猿の仲みたいに言ってたのに、仲良すぎだろ! なんで、メンバー同士で決裂したんだよ」
「あぁ、あれねん。あれはねん……」
「私が悪いの! 私がみんなのことを考えられなかったから」
今のやりとりで何かあると思った
急に
「本当にごめんね。あんな形とはいえ、
「ボクも会うのが怖くて……」
「そんな思い詰めなくてもいいよ。ねっ!
「えっ! えぇ、あれは仕方なかったっていうか……」
物事をはっきりと言う
気になったことを、
「それで、なんのために呼び出したの? ただ謝りたかっただけじゃないんでしょ?」
「うん、話したいことがあったからん」
「話したいこと?」
「そうだよん」
「
「アタシも!」
「
思わぬ声かけで、
「ちょっと待てよ。ライブ配信するから助っ人使わないって話してたばかりじゃないか」
「でも、まだ学校側に撮影許可取ってないんでしょん」
「確かにそうだが……」
「じゃあ、ボクたちが助っ人した方がバンドってものを知ってもらえるじゃん!」
二人でやるより、皆が知っているバンドの形式にした方が興味を持ってもらいやすくなると、ゴリ押ししてくるが、
ただでさえ、
できる限り配信して、ランキングは上げておきたい。
そんな時、「あてぃしも配信は否定派ですね」と落ち着いた雰囲気の声が聞こえてきて、またもや部室に第三者が乱入してくる。
『生徒会長!』
全員が入ってきたメガネ姿の女性に驚きを見せた。
白髪のツインテールが綺麗な女性。かけているメガネも彼女という素材を引き立てている。
この場にいる全員が目を釘付けにされる美しさだった。
見惚れてしまい、
「どうしてだ?」
「簡単なことです。
的確にダメ出しをする生徒会長だったが、彼女の言う通りだった。
彼女の学校での人気はネットほどない。それどころか、
それは、彼女の性格が起因していると思う。
エンタメ色の強い画面上では、彼女の元気で明るすぎる性格は役に立つが、リアルとなると嫌悪感を示すものも出てくる。
それどころか、変人扱いされてしまうこともあり、敬遠される可能性もある。
「そこで、あてぃしは校内演奏に振り切って、スタープロジェクトを知らない人に向けた宣伝にした方がいいと思います。その人たちをライブ配信に呼び込めば、
生徒会長の意見に
あまりに的確すぎてどう切り返せばいいのかわからなかった。
しばらくの間沈黙が続くが、それを切り裂く出来事が起きる。
「もしかして! ホワイトちゃんだよね!」
突如として話題をすり替える
あまりの接近と急に手を握られた生徒会長は赤面した。
顔を逸らしながら無理やり口を動かす。
「ホワイトってなんですか? そんな人、あてぃしは知らないです」
「あれ? 人って言ったか?」
「あっ!」
口を滑らせた事を
「やっぱり、ホワイトちゃんだよね! いつもコメントありがとうね。まさか、同じ学校だったなんて」
「その名前で呼ばないでください! あてぃしには
インドア・ホワイト改ため、
「こりゃ、根っからの陰キャだな」
「確かに……」
人の変わりように
しばらくして落ち着きを取り戻した
「それで、校内演奏に振り切るか、配信していくか。どちらにしますか?」
もう答えは決まっていた。なぜなら……
「校内演奏に振り切るよ」
「
「だって、一番のファンがそうした方がいいって言ってるんだよ? だったら、それが私たちにとっての最適解だと思うんだよ。それに……」
「はぁー、二人とまた演奏したいってことか……」
「うん。本当は
もうひとりのメンバー。
「そういえば、なんでお前ら解散したんだ?」
彼の言葉を聞いて、
「せっかくの機会だし、良い頃合いだと思う」
そう言葉を紡ぎ、
「
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