第27話 これからはずっと……
『アイツと一緒に音楽をやってほしい』
あの必死な
今日の昨日の昼の出来事を思い出すと、胸が痛くなる。
「でも……」
彼が自分にした行為も素直に許せるものではなかった。
事情はどうあれ、
そういえば、前にもこんなことがあった。
彼は完全な男の目をしており、あの時も心の奥底に傷をつけられた。
だが、彼のことは結果的に許せた。
あの時と今とではどう違うのだろうか……
そう思った
『
「ごめん、忙しかった?」
『いや、別に暇だったけど……』
本当は溜まっている宿題をしないといけないのだが、大好きな人からの着信を優先しない理由はない。
精神的にやられている
「ちょっと、相談したいんだけど……」
彼の姉から聞いた話を全部、
『そんな事情があったとはな……」
彼にも人の血が流れている。不幸に
電話口から冷静な声色が聞こえてくる。
『それでも俺は許せない。
それが
「ありがとう……時間、作ってくれたんだよね」
『そんなこと……』
「声、聞いてればわかる。本当にありがとね」
そう言って、電話を切った。
「どうすれば……」
胸に引っかかる気持ちが邪魔だ。これさえなければ、自分はこんな立ち止まる事なんてないのに……
自分の胸を抑える。
胸を抑えていると、病院での出来事を思い出す。
結果は後日となり、こっちにも恐怖している。
悪い結果にはならないはず。大丈夫だ。
そう思っているからこそ、母親にもまだ喋っていない。不安にさせたくないから。
「お母さん……」
お母さんなら、こういった時にどう解決するのだろう。
自分の倍の人生経験をしている人生の先輩。今の自分と同じ状況など、何度か体験してきたは
ず。
自分では答えは導き出せない時、もう、誰かに頼るしかない時。母ならどうするのか。
「
元気のない自分を心配してくれたのか、母は部屋の前まで来てくれた。
母の優しい声に
隣に座る母。そんな母親の顔を見ていたら、自然と涙が流れてきていた。
抱きついて、この三日間で自分に起きた出来事を全て話した。
病院に行き、精密検査をした事も。その時に、医者に乳ガンかもしれないと言われたことも。
あらゆる要素が絡み合い、
母は
「そうだけど……」
あくまで可能性だ。でも、ゼロじゃない限り、
「大丈夫よ。
「でも……」
「そっちは祈るしかないわ。今さら変えられないわけだし」
母にそう言われ、
だが、まだ
だから、すぐに答えを提示してくれた。
「男の子についてはね、
「素直に」
「そう。他人がどう言おうが、
彼女の母──
まともな職に就かず、夢追いばかりしている彼を、
しかし、自分の気持ちをわかってくれなかった両親を半ば
その後は
だから、
母の言葉に
「お母さん……ありがとう」
そう言って、部屋を飛び出す。その時に、スマホを取り出し、ある場所に連絡をして……
「マイハ……
部屋に飾ってある写真に向かって謝罪をする
彼は今、一人
あの時、画面越しにキスをしたり
それほど、彼にとって
「でも、それが
彼女の本気の拒絶。自業自得とはいえ、それを
「どうして……僕の前からいなくなってしまったんだよ……
彼女がいたから、生きる意味を見出せた。
彼女の笑顔を見るために、どんなことでも頑張れた。
彼女だけいれば何もいらなかった。
だから、
似ているだけの別人だとわかっていても、それに
「でも、本当にお別れだね」
涙を手の甲で拭い、決意する。
自分が本来したかったこととは反対の行為を行ったのだ。当然の
目から涙が
胸の奥が針で刺されているかのようにチクチクする。本当は切りたくない。でも、切らなければならない
頭が狂いそうになりながら、奇声をあげて写真を次々とゴミ箱に捨てていく。
あまりに大きな声だったので、姉は心配になり、
「
「姉ちゃん……」
姉の顔を見て、
「ちょうど良かった。
「僕に? 誰から?」
弱々しく言葉を紡ぎながら姉の言葉に首を傾げ、電話に出る。その第一声に、
電話越しから
「
電話越しに優しく声をかけられ、自分が錯覚を起こしていたのだと、
声の主は
「ごめんなさい。僕は君に会えない。どんな顔して会えば良いのかわからないんだ」
『いいから来て』
優しくも芯の通った声を浴び、
「姉ちゃん、僕行ってくるよ」
「うん」
今日、決着が付く。
夜は深い。辺りは電気が消えてる場所が多く真っ暗だ。
「ごめん。遅くなった……」
暗くてよく見えなかったが、
間違えたのかと思ったが、この場所にいると言っていたのは彼女だ。人違いということはあり得ない。
無言の空気が漂い、
「僕、君に……」
そう言葉を紡ごうとした瞬間……自分が誰かに抱きしめられている感覚を得た。
突然すぎる出来事に、
「あの時はごめんね。私、
恋人に語りかけるかのように、
だが、
「私は
「一緒に音楽やろう」
月明かりが二人を照らす。まるでプロポーズをして、その返事を待っているかのような、そんな光景だった。
涙を流し、膝から崩れ落ちる。それを
二人だけの秘密の時間。
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