第25話 覚悟
メンバーにして欲しい。
突然の申し出に二人は固まる。しかし、しばらくして現実に意識が戻って来た
「分かってる……さっきの行為をした後に信じてもらえるとは思ってない。でも、僕がハニーと音楽をしたいのは本当なんだ! それに、あの匂い、雰囲気……懐かしかった。僕はまた会えて嬉しかったんだ」
「
「うん、ハニーは会ったことない」
自分の世界だけで完結させてしまう
「お願いします! ハニーと音楽をやらせてください」
深々と頭を下げ、
「ダメだ」
「なんで!」
「それは俺たちが決めることじゃない」
真っ直ぐに
「おい!」
勝手な事をやる
中に入った
肝心の
その姿は
「マイハニー、大丈夫?」
彼の声を聞いて
先程行った抱きつくと言う行為に、背筋を凍らせる発言。
あれは
今はこの男の声など聞きたくない。しかも……この部屋にこんな変人と二人きりなのが更に恐怖を増す。
何も言えない。だが、
「何やってんだ!」
遅れて
聞き慣れた
「何って? ハニーの元気を取り戻そうとしただけだよ」
「余計恐怖を与えるだけだ」
「同感だな」
「なんでそんなに僕を遠ざけるんだよ!」
「それはお前が
「僕はハニーのためを思ってやってるんだ! 僕にはハニーが必要なんだよ!」
なんとしても
「
小さな声で泣いていた。
鼻水を
これ以上は無理だと判断した
立ち上がらせ、帰宅を
「待って!」
背中を向け、スタジオを出ようとする
ベースを持つ姿はかなり様になっており、思わず
今がチャンスだと思った
作曲の知識など全くなかったが、彼女を思い、必死に作曲した。あの日のことが夢だと思いたくて……目の前にあるのが現実だと信じたくて。
愛を捧げる歌。彼女には近くにいてほしい。自分が成長した姿を見せたい。
あの日、自分の音楽を褒めてくれたあの笑顔と言葉が一生自分の頭から離れない。
自分の中で一生の記憶として残っているから……墓場まで持っていくと決めているから。
力一杯演奏をし、最後の一音を引き終わる。
彼の力強さと想像以上の演奏技術に
「しょぼい……私たちの目指す音楽とは違う」
「確かに凄かったが、俺たちが目指す音楽とは違うな」
「
演奏技術で言えば、確かに凄いものだった。しかし、彼の演奏は自分の気持ちを素直にぶつけるだけ。ただの自己中心的な音楽。
それどころか、肝心の届いて欲しい人物にすら届いていない。
それでは皆を感動させることはできない。彼らの目標──スタープロジェクトで優勝し、伝説を越える音を奏でるなど不可能だった。
根本から目標が違う。覚悟の違いが彼らに感じさせた違和感だった。
「帰って」
演奏も聴いた。これ以上この男に費やす時間はない。それに、一秒も同じ空気を吸いたくない。
あまりにも冷たすぎる声色に
「じゃあ、俺たちも帰るか」
「私は残る」
その後、
誰もいなくなったスタジオで
帰宅した
涙は流れない。ただ、拒否された疑問だけが残る。
音は良いものだった。実際、自分が演奏した物の中で一番最高のものだったと思っている。
それでも届かなかったのが事実。悔しさよりも、悲しさの方が心に残る。
彼女に拒否される。それは、
部屋の扉が開き、聞き慣れた女性の声が自分の鼓膜を刺激する。
「勝手に入ってくんなよ」
「しゃーないでしょ。アンタ元気なさすぎて心配なんだもん」
「それにしても……この部屋はキモいよ」
「悪かったな!」
壁全面に貼られてる
切り抜き動画などから画像を引っ張ってきて自作した
いつも通りの部屋を見ながらため息を吐く妙。そして、
「でも、しゃーないか。まさか
姉の言葉聞いて、
幼馴染で将来結婚まで誓い合った人だ。
しかしある日、家族ぐるみで海に遊び行った時、不慮の事故が起き、彼女は死んだ。
海から引き上げることはできるのだが、もう既に息は途絶えており、助けることができなかった。
葬式で最後の顔を見た。その顔はとても穏やかだった。火葬もしっかりし、遺骨も部屋に置いてある。
だから彼女は死んだのだ。
「でも……」
鏡写しかのように似ている彼女。そんな人物が現れたら嫌でも彼女に
「もうやめなよ。彼女は事情知らないんだから。ほら、ご飯食べよ! 今日は
「うん」
姉が部屋から出ていく。その部屋で
「わかってるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます