第24話 やっと会えた
「来ないなー」
「まだ三十分あるよ! ちょっと早かったんじゃない?」
彼女たちはいつも通りスタジオに来ているのだが、今日は中には入らず、外にいる。
理由はある人物と待ち合わせをしているため。
練習スタジオがある場所は幸いなことに、人通りが少なく、誰かと待ち合わせをするには最適な場所でもある。人混みが苦手な
「兄貴たちにも練習断って来てるんだ。これで来なかったらあの野郎、許さねぇ!」
「まぁ、怒んなよ。それにしてもあんな大胆なことしてくる奴もいるんだな」
それを語るためには、一週間前に
一週間前。
「今日はここまで! また明日ね。バイバーイ」
そう言って
そんな彼女を見て、スカートから出ている生足に目が行く
「当たり前だ。昨日に続いて今日も配信。学校も行ってるんだし、キツいんだよ」
「でも、そのおかげもあって……ほら! ランキングも二千位まで登ってきたよ」
状態だけ起こしてスマホの画面を見せてくる。
昨日は五千二十位だった。たったの一日でこれだけ伸ばしたのは彼らの
それでも、突破範囲まではまだまだ遠いので、努力を続けていかなければならないのが現状だが。
ランキングが上がって喜んでいる美月を見て、
今週も
「じゃあ、今日は解散ってことで……お疲れ」
「お疲れ様ー」「お疲れ」
「ちょっと待って!」
「なんだよ」
「いいから来て」
帰ろうとしている
差出人は『K』という人物。絶対にイニシャルだが、わざわざDMを送ってきたということは、動画や配信内のコメントでは書けないことなのだろう。
書かれている内容を見て、三人は
『突然のDM失礼します。私、
ライブスタジオ『
なぜ、メッセージ主はこの場所を待ち合わせ場所に設定したのだろう。
この場所の選定により、
「あのな
「確かにな……
二人の予想は、練習場所がバレてるといったものだった。
ストーカー気質のファン。
しかも
二人からしてもこの話は乗らない方が吉だと思っていた。
それでもお人好しすぎる
「そんなもんお前に会う口実だ。コイツと会うのは俺は
「でも……」
「でもなんだ?」
「もし本当なら、この人の願いを叶えてあげたい! もし嘘でも私たちが騙されるだけ。こっちに損害はないはず」
「そうじゃなくってな……あぁ、もう! わからずやだな! 俺は
照れ隠しのためか顔を
「
「なんだよ!」
彼の気持ちは
「じゃあ、中間を取って三人で行くってのはどうだ? もし何かあっても俺らが対処してやるよ。それなら問題ねぇだろ?」
「うん!」
「話は決まりだな」
「待てよ……」
「なんだ? まだ不服か?
「そうじゃなくて……俺は……あぁ! わかった。わかったよ。それで行こう。少しでも危ないと思ったら帰るからな」
「OK」
色々とあったが、結局行くという結論になり、一週間後、約束の場所にやってきた三人だった。
あれから十分経っているが、目的の人物はやってこない。
警戒している
「しゃーねぇだろ! これ以外に
「俺たちSPじゃねぇんだから……あれ?」
それだけならまだいいが、その男は明らかにこちらに歩いて来ているように見えて……
直後、彼の予想は的中した。
フードの男はいきなり走り出し、
男の行為があまりにも異常な上、声もデカかったので、少々いた通行人は
突然の行為。
「やめて!」
拒絶の感情を声に乗せ、男を突き飛ばしていく。
尻餅をついた男は、首を傾げながら、「なぜ? マイハニー」と疑問を口にした。
フードが外れ、そこそこ整っている顔が
「おい!さっきからマイハニーとか言ってるけど、お前、
「嘘だろ……
だが、すぐにその疑問は解決することになる。
「違うよ! この人知らない。会ったこともないもん!」
「そんな酷いこと言わないでよマイハニー。僕は君を画面越しに見て、色々想像してたんだ。君にキスもしたし、君を想像してオナニーだってしたんだよ。僕は君を絶対に僕のものにするって決めてるんだ」
彼の発言は男からしても気持ち悪いものだった。
その行為は完全にガチ恋勢、そのものだった。
男の意外な言葉。それを聞き、
「気持ち悪い……」
「えっ!」
「気持ち悪いって言ってんの! 私のファンになってくれるのは嬉しい。でも、そんな感じになっては欲しくない。ちゃんと、ちゃんと、私たちの音楽を聴いてよ!」
そんな彼女を見て、
「あのDMの内容も嘘だったんだな。だろうなと思ったよ。あぁ言えば
「わかってて来たの」
「まあな、言い出したら
「なるほどね。でも、マイハニーは僕の彼女だ」
「バーカ。アイツには俺が告るんだよ。お前みたいなキモくて危ない奴にアイツを預けられるか」
二人は睨み合い、男の意地がぶつかり合う。
「マジかよ……こんな展開予想できたか……」
とんでもない事態になったこの状況に
そんな
「君、名前は?」
「
「
ここからまた別の戦いが始まる……と思ったのだが、
「僕を君たちのメンバーにしてよ。僕、彼女と音楽がやりたいんだ」
「は?」
「だから! マイハニーと音楽がやりたい。それが目的でこの場所に来てもらったんだ」
ここに来た本当の目的。それを彼は口にし、またも無茶振りを押し付けてきたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます