第23話 ファンとの距離
日常。学校生活を過ごし、帰宅。いつも通り、スタジオに集合する。
「マジでキツかったわ〜」
「あの姉ちゃん、キツいことしか言わなかったし、お前の兄貴も音楽になると結構厳しいんだな」
内容はスパルタ。初心者にやらせるようなものではなかったが、特効薬のようなものにはなった。
あれだけ散々な言われようだったのに、いきなり伸びると思ったは都合が良すぎだと思う。
だが、実際、二日という短い時間で、自分でも成長を実感できたのは凄い。
「やったことといえばアルペジオ奏法に弦の抑え方など基礎だけか……」
アルペジオ奏法。全ての
コード演奏とは違い、単一で音が出るので上手い下手が
実際、ギター経験者でもこれは難しく、逆にこれが上手い人に下手な演奏者はいないとまで言える。
曲を弾かせてもらえず、基礎しかやらせてもらえなかった
だが、
実際、
音程以外にリズム感も皆無なので、メトロノームを使用した基礎練習を
ドラムはバンドの
男同士で
『すれ違い』がテーマ。
それを歌から感じ取れ、
四人体制のガールズバンドだった。
解散のきっかけは思いのすれ違い。
二対一対一という構図になり、結局残ったのは
その涙を見て、
手の甲で涙を拭き、「大丈夫だよ」と
「俺にも兄貴の曲聞かせてくれよ」
「いいよ!」
三人で聞こえるように、スピーカにする。
想いが強かった。
おそらく主なメッセージは恋愛の歌。しかし、友や家族とのすれ違いにも感じられる──そう言った歌だった。
歌に聞き
ノートパソコンを開き、配信の準備をしていく。そして……
彼らの順位は今、五千二十位。億という参加人数の中からこの順位は健闘中の健闘だが、まだ予選突破はおろか、千位にすらも届いていない。
終了まで二ヶ月と三週間。早い段階でブーストしておきたい
そうして、今日やることになった。
『始まった!』
『
『
など、いろいろなコメントでコメ欄が盛り上がる。
「久しぶり! 昨日上げた動画見てくれた!」
『見たよ!』
『すごかった!』
『あれって、CG? それとも本物?』
「あー、あの夜空での演奏ね。ごめん、あれは合成なんだ。本当はスタジオで撮ってる」
いつも通りの調子で
現在の同接二千人。さすが、元々ちょっとしたインフルエンサーだったこともあり、既存ファンがこぞって集まってくる。
その中には
「みんなは何か聞きたいことあるー?」
『そういえば、
ファンとしては当然の質問だった。
少し成り行きは違うが、彼らの負の部分はあまり見せないようにしようという
『ありがとうございます』とお礼が入り、その後も質問責めが続いた。答えられる質問にはできる限り答えていったが、ある質問が目に止まった途端に
『
心無い言葉が飛んできた。
ネットでは当たり前の行為。しかし、
「兄貴のことは……」
「ごめんなさい! そこのことについては答えられないです。本当にごめんね」
『えー、つまんない』
『ちょっとくらいいいじゃねぇか!』
『ケチ、ケチ』
自分達が聞きたい質問をはぐらかされたため、リスナーはブーブー文句を言ってくる。
それはだんだんエスカレートし、リスナーの文句は止まらない。さらには、
『彼女っているの?』
『いや、噂だとたくさん女がいるって話だぜ。いいなー』
『そういうおまえもキモい。でも、もしそうなら私幻滅だわー。
ありもしない噂を口にしていくリスナー。
全て嘘で、適当なことばかり言うリスナーに
反論しようと言葉を出そうと準備する。しかし、
そんな時、インドア・ホワイトというアカウントが火に油を注ぐ行為をしてしまう。
『それより、風の噂で聞いたんですが……
あの場にいたもので、合同練習のことは絶対秘密にするという誓いを立てた。
なのにどこからかリークされてしまったらしい。
急いで撤回して行こうとする
『身内
『もしそうなら私、
誰がリークしたのか知らないが、人の努力を踏み
「本家……しかも、
「
思い当たる節がある
彼の心にトラウマを植え付け、音楽から離れさせた人物と言ってもいい。
あの魔女のような性格の女。アイツなら自分を蹴落とすために、リークという方法もやるかもしれないと思う
この間にも信者とアンチのバトルは繰り広げられていた。
信者は
反対にアンチはプロがそういうことをしたら、公平ではない。特に
どちらの意見も間違ってはいない。だから、この議論は
こうなるとは思わなかったコメ主──インドア・ホワイトは、
せっかくのチャンス。これを逃す手はないと思った美月たち。
急遽だが、演奏することになったが、話題を逸らしたことにより、「逃げるのか!」と言われてしまった。
その言葉にムカついた
所定の位置につき、三人は演奏をした。
奏でる歌は既存曲──『
オリジナルかつ未発表の曲という縛りがあるのは、二次予選からなので、一次予選はできる限り既存曲で勝負していきたい。
コンセプトは『憧れに届くように』。
少しロック調な曲だがハードロックほど、とっつきにくさはない。夢見る少年少女が憧れの舞台に
男女共に当てはまるようにしたかった
基礎力がアップした三人の演奏は、二日前のものとは
プロが聞いても感動できるレベルと言ってもいい。
『凄い!』
『うぉぉぉぉぉ!』
『ビッグバン! ビッグバン!』
コメ欄が一気に演奏に釘付けになる。その勢いで
こちらは新曲。『楽しい学園祭』。
コンセプトは『学園祭を楽しむ学生のように』
何もかも忘れて、今この瞬間を楽しもうという意味がコンセプトに込められている。
こちらはポップで、教育番組でも使用できそうな曲だった。
一風変わった曲調にリスナーは最初驚かされたが、すぐに彼女たちの
歌詞の中にある『この瞬間は一瞬、でも思い出は一生』という詞が
演奏が終わる。
もう
「ありがとう!」
『うぉぉぉぉぉ!』
コメ欄と一心同体になり、とても楽しいライブができた。
「ごめんみんな。今日は遅いからここまでね。もしよかったらポイント入れてくれると嬉しいな」
本人にそんな意図はなかったが、無意識に可愛い声でのおねだりになってしまった。
仕草も可愛く、そばにいた
皆にお別れをして、配信を切った。その後すぐに疲れがどっと出てきて、脱力する三人。
「よくあんな演技できるよな」
「演技って何? ファンへの対応はあれがデフォでしょ?」
「そう言えるってことは、
普通はそんなこと言えない。
人を楽しませる才能。それが美月にはある。
「じゃあ、俺帰るわ」
「俺も」
「そう、なら解散にしよか。明日も集まるしね」
「あぁ、風邪ひくなよ。
最後に
明日以降もまた戦いは続いていくのだから。
ライブ配信当日の夜。
とある一室でライブ配信に参加していた男がいた。
彼は
「やっと見つけたよ、マイハニー」
と、嬉しそうな笑みを
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