第5話 夜間外出禁止令
さて、お腹も満足した所で次のお楽しみは……
「ねえ~この村って、他にも大きな露天風呂があるんだって! みんなで行ってみない?」
旅館のロビーに置いてあった『六つ墓村観光パンフレット』を持って、子豚が皆に提案した。
「キレイな星を見ながら温泉に入って、ビール飲むのもいいね~」
食事の間、すでにビール1ケースは確実に飲んでいるひろきが旅館の窓から外を眺めて呟いた。
「ビール飲みながら星を見るんだろ…ひろきの場合は……」
「絶対ビールが先よね……ひろきの場合……」
「え……?普通そうじゃないの……?」
いやいや、普通はそうではないぞ。ひろき……
「ここから15分程歩いた所にあるらしいわよ!大展望露天風呂」
「それじゃあ、これから行ってみようか~」
やはり、温泉旅行に来たからにはたくさんの温泉を制覇しなければ!皆は子豚の提案に賛成したが、その様子を見ていた仲居の一人が困ったような顔をして、シチロー達に釘を刺した。
「あの……申し訳ありませんが、夜の外出は出来るだけ控えて頂きたいのですが……」
「えっ?そりゃまたどうしてですか、仲居さん?」
シチローが不思議な事を言う仲居にその理由を尋ねると、中居はなにやら困ったような表情で言葉を濁した。
「いや…それは……」
そして仲居は暫く沈黙していたが、仕方がないといった顔でその理由を明かした。
「実は……出るんですよ、夜になると……」
「出るって、何が?」
「これですよ! これ!」
仲居は両手の手首を顔の前でぶらつかせ、ウラメシヤ~の真似をした。
「幽霊が出るのか!!」
* * *
「ねえ、『肝試し』やらない~?」
幽霊が出ると聞いた途端、てぃーだが嬉しそうにとんでもない事を言い出した!
「肝だめしぃ~!」
「ちょっとティダ! アンタ中居さんの話聞いてなかったの? 冗談じゃないわよ!遊園地のお化け屋敷じゃないのよ? 本物のお化けなのよ!」
嬉しそうなてぃーだとは反対に、幽霊関連のものには全く免疫の無い子豚は肝試しなんてとんでもないと猛反対する。
「だから面白いんじゃないの。こんなチャンスなかなか無いわよ」
てぃーだは元来、自分の目にした物以外は信じないタチの性格であった……
もし、幽霊が本当に存在するのであれば、是非この目で見てみたいと思っていたのだ。
「でも、ちょっと面白そうかも」
とは、ビールを飲んで上機嫌なひろき。これでティーダと合わせて二人が賛成という事になる。
「シチローはどうするの?
まさか、男のクセに幽霊が怖いなんて言うんじゃないでしょうね……」
「ま…まさか。怖い訳がないだろ! 肝試し位どうって事ないよ!」
てぃーだの挑発に、まんまと乗せられるシチロー。本当に単純な男である。
「はい、じゃあ3対1で決定ね」
「お化けキライなのに……」
仲居の話はこうだ……
この旅館から『大展望露天風呂』に行くまでの途中に、小さなお寺と墓地がある。
そのお寺というのは、住職が亡くなってからというもの管理が行き届いていない為、過疎地域にありがちな長い間供養をされていない墓が沢山あった、その怨霊がさまよい、夜になると人魂が舞いそこで幽霊を見たという人も数多くいるという事だ……
「ひえぇぇ~マジじゃないのよ……」
「なんだかワクワクするわ」
仲居の話に対し、嬉しそうに胸をときめかせるてぃーだと、絶望して項垂れる子豚。その対照的な二人のリアクションを見て、シチローはどうせ肝試しをやるのならば絶対にてぃーだと組むべきだと考えた。
「よし、じゃあ2人ずつの組に分けよう。オイラとてぃーだの『メインキャラ組』と、コブちゃんとひろきの『ボケキャラ組』って事でいいよね」
「こらあっ、シチロー! 何で私達が『ボケキャラ』なのよ!」
「そうだよ! コブちゃんはともかく、あたしはメインキャラだよ!」
「ひろきは『酒キャラ』でしょ!メインは私よ!」
この中ならてぃーだの取り合いになるのでは? と思いきや、子豚は自分達が『ボケキャラ』にされた事に猛然と反発していた。いやいや、チャリパイの中でボケキャラは誰?と言ったら十人中十人が子豚を指さすだろうに。
「まぁ……とにかく、この二組に分けるから」
シチローの独断で、シチロー&てぃーだ組、子豚&ひろき組に分かれ、順番に幽霊が出没するスポットを通り抜け、お寺の写メを撮って戻って来る事が決められた。
ジャンケンで、最初の組はボケキャ……いや、子豚&ひろき組となった。
「ひえぇぇ……ホントにお化けなんて出るのかしら……」
「だって、お化けホントに見た人だっているみたいだよ……」
用心深く辺りをキョロキョロしながら、恐々と歩く子豚とひろき。果たして、幽霊は本当に出るのだろうか……
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