第3話 襲来

 母なる惑星から追放されて、どれだけの年月が経ったのだろうか。もはや別の暦が採用されていてもおかしくはないと、それは思う。

 それは、タコのような異形だった。艶々というよりはヌルヌルという表現こそが正しい表皮はうっとりするほど美しい朱色で、それは昔からメスに困ったことはなかった。

 宿敵タコメット大臣の謀略によりあらぬ罪を清算することになったそれは、母なる星に変えることは許されない。望郷の想いはなくもないが、今更帰ったところであちらの生活に馴染めるとも思えない。

 それが新しい住処に相応しい他を探すのは道理であろう。船に備わるナビが演算した、最適な惑星まで長い長い旅路を渡ってきた。

 最適な気温、生命の有無、その他諸々、ほとんどの条件を満たした奇跡の惑星。その星は、現地住民にこう呼ばれていた。ーーー地球と。

 地球換算で168年と6ヶ月の旅が、今ついに終わりを迎える。


 「あきら見て!流れ星!」

 「あれ、隕石じゃね?ていうか、なんか裏山の方に落ちていってない!?」

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