あいつの彼氏(?)編
第22話 私の運命の人というのはこのような人だろうな
「ふむ、やはり私の運命の人というのはこのような人だろうな」
メガネをカチャリと上げながら1人の男子が呟いた。その目線の先には、漫画が開かれていた。そして、彼はそこに描かれている1人の少女をすっとなぞる。
「ま、いたら誰もがほっとかないよな〜。最近のオレのお気に入りはこの子達だけど」
自分の世界に浸っていた男子に友達が笑いかける。男子は友達の手元に目線を落とした。そこには1枚の高校の広報のようなものが握られていた。
「可愛い子揃いでさ〜!彼女とまでは行かないけど、なんか放課後に彩りが加わるって言うか……!」
熱弁する友達の手元にもっと目をやる。そこにはとある女子たちが映し出されていた。そして、男子はその中の1人を見ると目を見開く。
「ここは私でも利用出来るんだな……」
男子がぼそっと何か呟く。そしてまたカチャリとメガネを上げた。その瞳は心做しか光っている気がする。
「ん?なんか言ったか?」
聴き逃した友達が聞き返す間もないほどに彼は急いでいた。何やら、動き出すような予感。だがしかし、彼女たちは何も知る由もなく――。
▼▽
「本日もよくお越しくださいました」
4月下旬。今日も飽きることなく活動している解決部。その面々は、なぜだか警察のコスプレに身を包んでいた。
「雪白さんみたいに凛とした雰囲気だと本当にいそうですよね」
1人の男子がそう言った。言われた女子は表情を変えずにお茶を嗜んでいる。いや、こんな警察いるか……?
「そうでしょうか、とても大変そうなお仕事ですが……」
「雪白さんの言うことなら聞いちゃうんじゃない?」
「それならいいですね」
賛辞されることに、慣れているのか女子は男子から投げかけられる褒め言葉をすっとかわす。けれど、かわされた男子も嫌な顔をすることなく受け入れている。それが彼女の強みだったりするのではないだろうか。
「というか、雪白さんになら捕まってもいい……なんて……」
1人の男子がもじもじとしながら言う。うーん、少し気持ち悪い気がするなぁと思いながら見ていると言われた女子はくすっと笑った。ような気がした。
「捕まりたいだなんて悪い方ですね。私が専属で追いかけさせていただきますね?」
「ゆ、雪白さん……!」
銀髪碧眼、透き通るような白い肌。整った顔立ちに抜群なスタイル。それでいて無表情で何を考えているのか分からない雰囲気が男子たちを虜にする。彼女の名は雪白 冬花。
「こんな警察官に挟まれたら逃げられないなぁ」
「そうね、逃がさないわよ?別に私が一緒にいたいわけじゃないんだからねっ」
「捕まえるのは夏澄の専売特許だもん。逃がさないよ?」
1人の男子が自分を挟む瓜二つな少女たちを交互に見ながら悩ましげな声をあげる。すると、片方が強気な発言をしたかと思えば恥ずかしそうに顔を逸らした。そして、もう片方は捕まえるという言葉の意味を履き違えているような気がした。
「それで、パトカーの中で3人だけになったら……ね?」
「夏澄たちのこの制服脱がしても……いいよ?」
両側からそんなことを言われた男子生徒はもう気絶寸前だった。なんというか……センシティブ……!もっと18歳以下に優しい発言をしなさいっ。
と、ふざけた対応をしているのは火野 夏織と夏澄。2人は瓜二つの双子である。なんだか、今日の対応はいかがわしい。
「五十嵐センパイ〜、ツーショットだよ〜。ふふ、センパイへのツーショット希望も増えてきたね〜」
「そうだなぁ。部に馴染めてるのは嬉しいこと、かな」
「そうだね〜、ボクも嬉しいよ〜」
1人の女子生徒が僕に予約状況を教えてくれた。僕は五十嵐 智季。女子まみれの部活である解決部の唯一の男子部員であり、接客時は男の娘である。
「ま、3年間退部は出来ないわけだし〜?力いっぱいボクと解決部のために働いてね〜」
そう言ってニコッと笑ったのは春峰 彩芽。解決部唯一の中等部メンバーであり、ボクっ娘である。発言には利己的な傾向が見られる、ような気がする。
「あわわ、智くん〜☆なんか、ゴムが見当たらないんだけど知ってたりするかな?」
なんともあざとい仕草で近づいてきた女子生徒。どうやらツインテールに使っている髪ゴムが片方見つからないらしい。でも、髪ゴムの行先なんて僕が知っているとでも……?
「どこで無くなったとか心当たりは?」
「俺達も探すの協力する!紅音ちゃんのためにならどこまででも!!」
僕もキョロキョロと辺りを見回し、近くにいた男子生徒たちも探すのに協力してくれている。なんというか、この人には人を動かす力のようなものがある気がした。すると、すっと手を差し出してきた1人の人物。
「夜宵っ!!」
無言で差し出された女子生徒の手の中には髪ゴムが握られていた。このふたりは秋元 紅音先輩と星野 夜宵先輩。合法ロリとクールビューティのペアだが、最近百合なのではないかとまことしやかに囁かれている。
「あら、トモキ。危ないわよ」
百合百合しい2人から離れようと振り向くと、夏織とぶつかってしまった。謝ろうとすると、彼女の服のポケットから何かが落ちてきた。何かと思い拾い上げると携帯用ゲーム機だった。
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