1章第9話 迫る嵐
先頭に立つギャングのバットがソラ目掛けて振り下ろされる。それを見切ったソラは身体を軽く動かして避ける。できた隙に刀を振り上げる。
手のひらから血とバットが飛び出す。
ソラは即座に次の敵の攻撃を片手で持った刀で受ける。空いたもう片方の手が光る。放たれたクリスタがギャングの身体を吹き飛ばした。ソラはちらりとティナの方を見る。
ティナは双剣を振り回し、ダンスを踊るかのように敵の攻撃をいなし、回避しながら的確に反撃をしていた。攻撃を右の剣で防いだかと思えば、次の瞬間には左の剣で別の敵の脚を刈り取る。刃が空を切る音とともに、次々と敵を倒していく。
心配する必要はなさそうだとソラは目の前の敵に向き直す。2人で相手している為、倒すべき残りの数はそこまで多くはない。ソラとティナは各個撃破していっているようでありながら絶妙にお互いに邪魔な敵を武器やクリスタを使って排除していった。
最後の1人に2つのクリスタが迫る。ティナのクリスタによって凍てつき動きの止まった身体が、ソラのクリスタによって爆ぜて吹き飛ばされた。
「ホーク、あんたやるじゃない」
ティナは双剣を鞘にしまいながらそう言った。ソラも上がった息を整えながら納刀する。2人は相手の出方を伺う。
「エイデン殿、全員伸びてしまったぞ」
と最後まで手を出さずに見ているだけだったサラが言った。
物資の中身を確認していたエイデンがこちらへ向き直す。
「あらら、想像よりはできるみたいだね」
特に焦る様子もなく気楽に言葉を発した。
「今度こそ、拙者が斬ろう」
再び、彼女の刀の鯉口が斬られる。ソラとティナも武器に手を置いた。どちらかが動けば戦闘になるそんな状況だ。
『ホーク、ティナさん、今すぐその場を離れて!』
一触即発の雰囲気の中、ウミの声が耳に飛び込んだ。その焦りが前面に出ている声にソラとティナは顔を見合わせた。瞬間、サラから視線が外れたことに気付き、視線を戻す。サラはその場から一歩も動かずにこちらを見ているだけだった。
「先に話をしてしまえ。なに、不意打ちなどとつまらん真似はせん」
サラはそう言い放った。本当かどうか分からないが、ウミがわざわざ通信をしてきた理由が気にかかった。サラの動きを注視しながら口を開く。
「イーグル、どういうことだ?」
『超高密度の侵蝕エネルギー反応がそっちに向かっているの!』
すぐに意味を理解したソラの顔面から血の気が引いた。高密度の侵蝕エネルギーとそれが移動している。その2つが合わさったことが意味するものは、コアルインズがここに向かってきているということだった。コアルインズは侵蝕区域の成長度合いに応じて強力になる。この侵蝕区域、ストレイはかなり巨大でコアルインズが生まれてから長い時が経っている。つまり、前回運良く倒せたそれとは比較にならないぐらいに強いコアルインズが来ているということだ。
「ティナ、撤収しよう」
ソラは直ちに逃げるべきだと判断した。コアルインズの危険度は誰もが理解している。
「はぁ!? ここまで来て撤収って正気!? 今、ここで退がったらあたしらは目的を果たせないのよ」
ティナの意見はソラとは真逆だった。
「だが、コアルインズがここに来たら何もかも終わりだぞ」
ティナは軽く鼻を鳴らして笑い飛ばす。
「でもここで逃げて物資を取り戻せなきゃ、ヴォルフの依頼を達成できずにあたしもあんたも終わりよ」
ティナの言っていることも正しい……正しいが、今すぐにこの場を離れなければ命そのものが危うい。命を落とせばやり直す機会も得られない。
「コアルインズもあの女も全部相手にするなんて無茶だよ、1回立て直そう」
ソラもこの状況でティナに従う選択はできなかった。と同時に彼女を1人置いておくこともできない。その行為は
「そんなに言うならあんただけ逃げればいいじゃない。もとからあたし1人で片付けるつもりだったんだから」
彼女は自信満々に反論する。ソラの言葉では彼女を説得するのは難しいだろう。
『2人とも頭上注意! 来る!』
ウミの叫びと同時に頭上から鋭い音が響き渡った。そして、天井が轟音と共に崩れ落ちた。ソラとティナは瓦礫をかろうじて回避することに成功する。2人とサラやシャードの連中との間に大きな瓦礫が積み上がった。その場にいた全員が空を仰いだ。
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