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悔しかったし、悲しかった。でも、それ以上に怖かった。"人攫い"、その事実だけで、背中がゾッとする。今頃、コウはどんな思いをしているだろうか。きっと、恐ろしい思いをしているに違いない。最初、この部屋に来た時、なんて狭い部屋なんだ、そう思った。でも、コウがいないと、だだっ広く感じる。
「早く助けないといけないのに、寝ろだなんて……クソっ‼︎」
寝るなんて事出来るはずがない、こうしてベッドでじっとしている事さえ難しいのに。居ても立っても居られなくなり、ドアを開けようとした時だった。ガチャリと外側からドアが開き、古春が入ってきた。
「……ルイ、明日、空戦になるかもしれない。それより、何処へ行こうとしていたんだ。」
「助けに行くんだ。」
「馬鹿者‼︎」
古春は右手を出しビンタの構えをした。一瞬、痛いのは嫌だと思ったが、僕はすぐに古春を睨みつけ、後退りなんか絶対にしなかった。痛みさえも受け止める、という覚悟を見せつけられた古春は、右手をしまわないまま左手を出し、僕を抱きしめた。
「馬鹿者……そんな事をしたら、ルイまで消えてしまうじゃないか。」
「……それでも僕は……」
「離さないから、絶対。」
苦しいほどに強く抱きしめられて、ハッと気づいた。
「ごめん、古春。また僕は、君を傷つけようとしてしまった。」
「私の事はいいんだ。ルイが、思いとどまってくれれば。だが、明日はきっと空戦だ。絶対に死ぬな、ルイ。」
「ああ、この僕が死ぬわけないだろ。それに、誰も、死なせない。コウもオサムも、明日取り返す。」
大事なのは、誇りだ。自分の腕を信じ、絶対に勝つ、という気概を待つんだ。強がっているだけかもしれない、でも、空戦は、そう思っていないと生き残れない。興奮状態が解けたのか、瞼がズンと重くなり、そのまま眠りついた。古春は僕をベッドまで運び、音を立てないよう、ゆっくりと部屋のドアを閉めた。
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