第1章 第5話 襲撃

託された未来の私です。


 古明地に家に行く宣言をされてから対策を考えた結果、古明地が来る前に帰ればよくね?という結論に至りました。


あの人の運動神経がどれだけかは知らないが、所詮は女性。

男性には勝てないとこれまでの人類の歴史が語っている。


つまり、この勝負…勝ったも同然…!と思いたい。




 そして運命の下校時。


普段はのんびりと歩いてく帰るのだが、今日は例の少女に見つからないよう、追いつかれないように

帰りの会にすら行かず、校内にとどまり下校チャイムがなるのを待つ。


それから、これまで眺めてきた学校の構造を把握した上で古明地の行動を見て、学校から出るルートを考えなければならない。


…考えるだけで大変そうだが、古明地を家につれてきてしまったが最後…それより大変な状況になることが優に想像できてしまうで、私は渋々茨の道を歩く。


ルートは古明地が見えなかったら走って逃げる。

見えたら正門から遠ざかるまで待機、後逃亡。

あとはアドリブでなんとかする。


幸いなことに、この学校は超がつくほど広いので巻くのにはちょうどいい…と思いたい…


そして…ついに時は訪れる。


これから…私たちの戦いが始まる…






と、思っていたが私の予想とは裏腹に古明地に会うことはなく、なんともなく帰路につけた。


やはり、あんな事を言っておいて来る気などなかったのだろうか。


無駄に警戒していた自分自身のことを恥ずかしいと思うと同時に、実は期待していたのではないかという気持ちになってしまい…どこか負けた気がした。


薄暗い、街灯のみがうっすらと光る道で、再び手遊びをしながら無駄な思考を繰り返す。


暇さえすればすぐしてしまう、悪い癖だ。


無駄にルートを考えたりしていたせいで疲れていたため、余計なことを考える暇もなく床につく。




 

 次の日、古明地は何事もなかったかのように…

いつも通りに話しかけてくる。


こ『おはよー!ごめんねー昨日家育の忘れてたー!

  今日こそはついていくから!』


ふざけるなよと、それのせいで無駄に思考した人がいるということをしっかりと理解してほしい。


正直、来るなら来い!って感じではあり、もし巻けたらプライドが折れて諦めてくれるのかとも期待していた。


まあ、昨日考えた対策があれば、今後も大丈夫ではあるだろう。


ルートを無駄に考えておいてよかったー…


とは言うのもの、さすがにいつか帰るルートには

限度は来るので、今のうちに新しいルートを考えておこう。


ということで、今日も今日とて古明地の話を聞き流しながら外を眺める。




 そうして再び訪れた運命のとき。


今日も、昨日と同様の場所でチャイムが鳴るまで待機をして、古明地の行動をみてからルートを決め…




『なーにしてるの?はくー』




…後ろから聞こえてるく絶望的な声の…


その声の正体は当然…


『美少女であるこの、古明地こいしが迎えに来てあげたよ!

 ほら!帰ろ!』


『…』


完全に想定外のところからの襲撃…


この状況になることを想定していなかったため、

この先起こることは推測でしかないが…確実に…

私の家に来るだろう…


たが、当然そんなことはあってはならない。


最近、理由は不明だがクラスメイトの視線が心做しか生温かく、弱くなって入るが、他学年や世間からの視線は依然変わらず、とても痛い。


そのため、何があっても家に連れ帰ることなど、

あってはならない。


したがって、私がここで取る行動は…


ザッ ダダダッ


ガンダッシュ逃走。


男は運動、女は頭脳、これ原始時代から言われてるから。


私のだって一応高校生、足の速さはある程度は

ある…はず。


正門をくぐり複雑な帰路に行き逃げ回ること数分。


おそらく逃げ切れたと思った私は腕を伸ばしてリラックスをしようとすると、何かによって腕が掴まれ私のリラックスタイムは終りを迎える。


まさかとは思い、そっと腕の方を見ると…

なんということでしょう…案の定というべきか…

そこには、古明地こいしがいるではありませんか…


『…』


しかも、今日の古明地からは想像できないほどに静かで、おとなしく見える。


さすがの私でもここまでは想定していなく、その光景を見られ、あたりからの冷たい視線も相まって

パニックになる。


焦った私はとりあえず振りほどこうとする

が、流石は天才少女。


スポーツができるがあまり腕、というか指の力が異常に強い。


無理に動けば私の制服が破れるレベルで。


振りほどくことは無理だと判断した私は、掴んだままの古明地を連れて、人の少ない帰路に走った。




…少し重く感じたのは、言わないほうがいいのかもしれない。







 そうして、私の家の近くの帰路につき、ようやく古明地が話し始める。


『いやー、やっとはくの家に行けるなー!すっごい楽し

 み!』


もともと、あまり話す気はなかったが、こういう床でしか聞けないと思うので、重い口を開いて質問を投げかける。


『…古明地さん、なんでそんな私に執着するんですか?

 正直迷惑してるんですけど。』


『唐突だねぇーというか、そうなの?ごめんねー

 今度から頻度は減らすからさー!』


なんとも軽い態度…塩対応の古明地はどこに行ったのだろうか…


『でもさー私、今まであんまりお友達と関わったことない

 からさ?どうしていいかわかんないんだよねー』


…ここでも来る美少女補正。とてもかわいそうに見えて…どこか守ってあげたくなる気がしてしまう…


『いや、そういうことじゃなくてですね?なんで私に関わっ

 てきてるのかなーって。

 ほら、周りには他にいい男がいますよね?』


…自分でも気持ちが悪い。こんな奴は関わりたくないと思うほどに、気色の悪い自己嫌悪。


『そう?私は全然そんなことないけど!それに、私にとって

 はくってすごい変わってたんだよねー』


変わってるのはそっちでは?


…心にとどめておこう…


『私たちはさー、昔っから例の称号があってね?

 皆嫌になるくらい話しかけてきたんだよねー

  

 この高校に来てからもねー特別なことろに来て、

 そーじゃない人が一人でもいるかなって期待し

 てたんだけどね。

  

 学校に入ったときもなんかファンの人が集まって来て、

 クラスに入ったときも、みんな話しかけてきて。

 期待外れだったんだよね。正直なところ。

  

 でも、そのどっちにも居てなおかつ話しかけて来なかっ

 たのも、冷たくあしらったのもはくだけだんだよね!

   

 それでもう私は惚れちゃったって!』



やっぱり、この人の考えは理解できないことが多すぎる…


とはいえ、自分が崇高な存在すぎるあまり、周りからは

普通の友達とは同じような関係になれない、そんな話を聞いたことがある。


しかぁーし、話を理解できるのとそれを受け入れるのは話が別だ。


関わろうだなんてみじんも…


…ん?"惚れた"?


…ん?


『ちょ…ちょっとまってください?

 惚れたって言うのは…?』


『え?言ってなかったけ?

 皆にはくと付き合ってるーって言ってるんだよね!』


『は?』


…色々と思うことはあったが、それより疑問が晴れたことがどちらかというと嬉しい。


あの冷たかった視線が突然温かくなることに説明がつく。


だが、説明がつくとはいえ何も異議を申し立てないのも話が変わってくる。


『…?私は?そんなことを受け入れた記憶はないんですけ

 ど?』


『そりゃぁ、まあ、私が勝手に言ってるだけだからね』


…もはや言葉が出てこない。


あまりにも自己中心的な考えの美少女…一概に彼女のみが悪いとも言えないというのが苦しいところ。


こういったエリートがこんな性格になってしまうのは大抵は環境によるものだ。

どんな人であったって環境により簡単に人は変わってしまうものだ。


たぁだぁ~!これもまた受け入れる理由にはならない!


ひとまずこれは今話すことではない…ハズ…

それに、この人を夜の街を歩かせるのはまずい…


下手したらまた余計な誤解が生まれる可能性がある。


『…とりあえず、家まで送るんで帰りましょう…

 一人じゃ危ないですし。』


『はくの家に?』


『あんたの家だよ』


『わかってるけどさー!wてゆーか、送ってくれるとか

 男らしい所あるじゃーん?』


『おいていきますよ』


『ごめんってー!私ははくと長い時間入れればいいから!

 じゃあ私の家までちゃんとついてきてね!』


『はいは…』


…独特な気配を感じた私は本能的に古明地をかばいながら角に隠れる形でその場にうつ伏せになる。


『え?』


その直後か同時と言っていいタイミングで…


バン


懐かしみのある…何度も聞いた音…

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周回少女 Kaihaku @kaihaku

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