「積んだ本のタイトルの頭文字を読む。」
天啓を授かった。わたし、そう言って立ち上がり、本棚に向かう。手当たり次第、引き抜いて、テーブルの上に、どん。とはやらない。本は大事にする方。そういった、わたしの行動を、ソファーに寝ころびて、本読むキミが怪訝そうに眺めていた。
「天啓を授かったの」わたしが改めて宣言すると、キミは「誰に? なんの?」と言った。
「誰に、って。神様に決まってるじゃない。読書の神様よ」
そうして、わたしは読書の神様から授かった天啓について説明した。神様は、本を積んで、背表紙に書かれたタイトルの、頭文字を読んで。
「読んで?」
「天啓を受けろ、と」
「まだ、授かってないんじゃん」
そう言って、キミは読んでいた本を、ソファー脇、テーブルに積んだ文庫本の山、一番上にぽん、と置いた。
「キキキキキキキキキキッ」
「え、なに、気持ち悪い。それは笑い声?」
天啓。そう言った。キミが読んでいたのは「キノの旅」とりあえず10巻。それがなんの天啓と言うのか。わたしは未だキキキと笑うキミを放っておいて、テーブルの上、本棚から持ってきた本をランダムで積み始めた。作為、あってはいけない。でも、目をつぶると上手に詰めない。崩れてページ、折れたら悲しい。本は大事にする方。
意味のある言葉、なかなか組み上がらない。「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」の下に「さようなら、今まで魚をありがとう」が来るとつい「あさ」と読んでしまい作為、目覚める。そうやって、2時間くらい、積んで、崩して、また積んで。その間、キミは「キノの旅」を読み続け。
「あ、出来たかも」
「え、神様なんだって?」
「今夜はカレーは、どうかって」
わたし達はココイチに行って、カレーを食べ、帰りに本屋さんに寄った。キミは11巻を買って、わたしは、おいしい漬物の本、迷って辞めた。「あさ」と半分、授かった天啓。これはきっと解釈違い。アパートの部屋、まだ本は積みっぱなしだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます