「ふみでなし」
「紅葉シーズンに入ったと聞いて。」
「紅葉、見に、行こうよう」
とキミが言って、わたしは食パンの耳を切り落とす。別にメタファーじゃない。
ダン、と大きな音がしたのは不器用なだけだ。まな板に叩きつけた包丁の、思いがけない高い音に、籠の中、オカメインコの冠羽、ぴょこり立つ。
キミの、愛すべきくだらない駄洒落、わたしは食パンに、キュウリ、ハム、マヨネーズ、そういったものを挟んだだけのくだらないサンドウィッチで応える。
切り落とした食パンの耳、等間隔、並べると枕木。そう思った瞬間、断然、電車。車は駅前の立体駐車場に置いて行こうよう。
「食べる?」
「食べる」
まな板の上、ラップに包んで、ぎゅうぎゅう、サンドウィッチを押さえていると、冷蔵庫にもたれてキミ、物欲しそう。摘んだ食パンの耳、キミに餌付けする。はむはむ、喰む、鳥かうさぎを思わせた。わたしもひとつパンの耳を喰む。味気ないのでマヨネーズをつけた。はみ出たハムの切れ端も、キュウリのヘタも。
「もはやサンドウィッチだわ」
「ずる」
不平、聞く耳持たず、キミが尖らした口に、残りの食パンの耳を押し込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます