「ふみでなし」

「紅葉シーズンに入ったと聞いて。」

 「紅葉、見に、行こうよう」


 とキミが言って、わたしは食パンの耳を切り落とす。別にメタファーじゃない。

 ダン、と大きな音がしたのは不器用なだけだ。まな板に叩きつけた包丁の、思いがけない高い音に、籠の中、オカメインコの冠羽、ぴょこり立つ。

 キミの、愛すべきくだらない駄洒落、わたしは食パンに、キュウリ、ハム、マヨネーズ、そういったものを挟んだだけのくだらないサンドウィッチで応える。

 切り落とした食パンの耳、等間隔、並べると枕木。そう思った瞬間、断然、電車。車は駅前の立体駐車場に置いて行こうよう。


「食べる?」

「食べる」


 まな板の上、ラップに包んで、ぎゅうぎゅう、サンドウィッチを押さえていると、冷蔵庫にもたれてキミ、物欲しそう。摘んだ食パンの耳、キミに餌付けする。はむはむ、喰む、鳥かうさぎを思わせた。わたしもひとつパンの耳を喰む。味気ないのでマヨネーズをつけた。はみ出たハムの切れ端も、キュウリのヘタも。


「もはやサンドウィッチだわ」

「ずる」


 不平、聞く耳持たず、キミが尖らした口に、残りの食パンの耳を押し込んだ。

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