羊たちが注目

 イマジナリー連邦捜査局をご覧の皆さん。

 イマジナリー捜査官です♪


 前回、ぬりや君がぼんやりして消してしまった『冷蔵庫の女』。この『冷蔵庫の女』のバラバラになった遺体が森の落ち葉の下や、河原の土の中から発見されるという恐ろしい事件をわたし、イマジナリー捜査官は追っていました。


 そんなわたしに無線が入りました。連絡を受け本部の遺体安置所に急行したところ、さらなる恐ろしい事実を聞かされる事になったのです。


 

 当初7,000文字と思われた『冷蔵庫の女』。

 しかし某捜査官の協力もあり発見された文章は6,200文字。800文字の文字が足りないのです。


「読んだところ不備はないみたい。どうせぬりや君の勘違いじゃないかな」


 ぐさり。


『その可能性は高いが、念の為この手の事件に詳しい人物を尋ねてくれ給え、ジーナ捜査官』


 わたしは本部からの無線を切り、凶悪犯罪者を収監する施設へ向かいました。




「名前は?」

「イマジナリー捜査官」

「ふむ。DHCのシャンプーを使っているな? ボディソープはビオレ、良い」


 そんな事を言いながら、厚いガラスの向こうでハンニバル・ヌリヤーがニヤニヤと笑っています。わたしは鳥肌を隠しながら捜査資料と復元した『冷蔵庫の女』をヌリヤーに渡しました。すると、さっきまでのニヤニヤは消え、ヌリヤーの目はまるでネタに喰らいつく獣のように変わりました。


「冷蔵庫の中を探すと、良い」

「協力感謝します······え、ちょ、ちょっと!?」


 資料をガラスの小窓から受け取ろうとしたわたしの手を、ヌリヤーがつかみ言いました。


「見返りに、いつものを」

「いつもの? えっと『そういうとこだぞ』?」

「もっと強く!!」

「もう。そういうところだぞっ!」


 とても、良い。そう言ってヌリヤーはやっと手を離しました。まったく、何なんでしょうね。

 

 でも、どうしてでしょう。嫌いじゃないのです。



 ともかくともかく、ヌリヤーの収監された施設からわたしは本部に戻り改めて『冷蔵庫の女』の遺体を検視しました。

 そして遺体の口内を調べていた時、喉の奥に何かが詰められているのに気がついたのです。


「鉗子を!」


 慎重に喉の奥からわたしがつまみ出したそれ。すでに茶色く変色していましたが、べっ甲色の透明な樹脂の下には赤い色が残っていました。

 どうやらそれはりんご飴の破片のようです。


「りんご飴の破片······齧った? まさか800文字分のりんご飴を······食べたというの?」


 その時、遺体安置所の内線が鳴りました。オペレーターとの短いやりとりのあと、わたし宛に外線が繋がります。


「やあイマジナリー捜査官。事件は解決したかね?」

「ヌリヤー!? 一体どこから?」


 すると、ヌリヤーは不敵な笑いをこぼし言いました。


「分室だよ。タイミングを見て『冷蔵庫の女』をめくって剖検しようかとね」

「分室? まさか」


イマジナリー文芸部 分室

『羊をめくる剖検』

https://kakuyomu.jp/works/16818093085160025592


「イマジナリー捜査官。羊の注目は集まったかね?」



 『羊』繋がりで『冷蔵庫の女』を分室まで持っていく手際、しかも応援や心配を頂いたこの削除事件までもネタにするそのしたたかさ。

 すでに切れてしまった受話器を叩きつけるように、わたしは叫びました。


「そういうところだぞっ!!!」



 (ごめんなさい、ありがとうございます)

 (皆様のご協力で冷蔵庫無事直りました♪)

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