8月でした。

8月

『予言の子供たち』

『凍傷』

『夏の彼方、窓辺の星』

『冷蔵庫の女』

『梟の報酬』

『幻馴染』

『鳥葬』

『死と乙女』

『イマジナリー文芸部』★今ココ



「さて、今回からは8月······って、どうしたの?」

「なんだか、燃え尽きたと言いますか」


 イマジナリー部室の並べた机に突っ伏していると、イマジナリー部長が顔を覗き込んで来る。

 

 肩から前に出した部長の髪が、まっすぐと滝のように垂れる。その毛先が机の上、目の前に広がって、窓からの陽射しにキラキラ光って反射すると、まるでせせらぐ清流みたいだ。

 

 冷たい川に浸す部長の素足は白い。

 川辺りの岩に座って濡れないように、ワンピースの裾を部長が捲し上げる。目のやり場に困って視線を外したその先で、銀色の岩魚がひとつ跳ねた。


「瀬をはやみ······」


 せせらぎに紛れるような部長の声が聴こえ振り返る。岩に両手をついた部長がぱしゃぱしゃと、足を交互に水につけ、その爪先を眺めていた。

 続きを促そうと、そんな様子を見つめていたら、くすっと部長はひとつ笑い、足先でこちらに冷たい水を飛ばす。


「ふふっ。続き、忘れちゃった」


 そうやって、はにかむように俯いて笑う部長を見て、われても末にあはむとぞ思った。よし良い。調子が出てきた再開だ。



「部長が文芸フリマ行ってる間に色々大変だったんですよ」

「へ? 文芸フリマは来週からだよ?」


 部長は眼鏡の奥で目をぱちくりと瞬きさせた。口なんかは「へ」の形に開かれたままだ。そんな部長の様子を見て背筋がひやりとする。やれやれ、もっとこう、身の丈に合ったお題をだな······。と、ここまでで目標文字数の半分。



 さて、8月は難しい。

 『自動販売機まで歩く。』が好評頂いた事、それが実力ではなくて、幸せな偶然の積み重ねだった事。しかし、当然、次回作品からはこれを超えなければいけない。そこで自分なりに考えてみたわけだ。それが以下。


①描写が良いらしい。

②先輩との距離感が良いらしい。

③ノスタルジックが良いらしい。

④切なさが止まらない。


「わたしとしては、②が気になるところです」


 そんなわけで先輩後輩シリーズ『予言の子供たち』『夏の彼方、窓辺の星』を書く。

 好みで言ったらかなりストライク良い。あとこのふたつ、文字数縛り。

 そうやってドヤ顔をしていると、部長は呆れたようにため息ひとつ。その顔には、そういうところだぞ、の言葉が浮かんで見える。


「そういうところだぞ」


 いやぁ、良い。さすが部長は外さない。

 ところで語尾の「ぞ」は「ゾ」の方がいいのだろうか? と度々悩む。


 そういうところだぞ

 そういうところだゾ


 イメージ的には、カフェでバイトしている孤独で気まぐれな不良少女の、ツンデレのツンとデレの、狭間くらいの時の「ぞ」。

 優柔不断な主人公に、その「ぞ」を持て、甘くチクッと釘を刺す。それでも主人公は、グイグイ来る天真爛漫な後輩にデレデレしてしまって、最後は気まぐれな不良少女にビンタされてしまうのだ。

 そんな付かず離れずのふたりの青春は、正に気まぐれな柑橘類のように甘酸っぱい。

 でも、一歩間違うと某園児になるから細心の注意をせねば。


 こんな感じに話は全然進まないが、妄想は捗ったのでこれで、良い。伏線はりみたいな事も出来たしな。

 最後は部長に締めて貰い、続く次回。


「そういうところだぞっ」

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