続、7月でした。

 続、と聞くとやっぱり思い描くのは「続・○○夫人」じゃないかな。とても良い。


個人授業プライベイトレッスン的な展開はしないからね」


 という掴みから今回は『自動販売機まで歩く。』の分析を部長とでしていこう。


「ないからね」



 『自動販売機まで歩く。』はもう消してしまったが、習作集の中で『ポストまで歩く。』として最初は書いたものだ。


「なるほど。まずは骨組みが出来てたから、細かい所に手が回ったって感じかな」

「そうですね。あと修正前に天川賞経由で読んだ作品から感じた『描写』ってこうかな? みたなのを試してみたらうまくハマったと言うか」


 ポストから、自動販売機に行き先が変わった事で大幅に修正した部分は、もちろんある。

 ポストでは、文通、入試願書など郵便物をアイテムにストーリーを進めた。この辺りは素人なりにまあまあ良い。

 反面、郵便バイクにも採用されるスーパーカブを出したあたりで増やし過ぎた感が出てしまい。

 さらにそのスーパーカブに乗ってラスト、「手紙でもひとつ書いてみようか」なあんて、ちょっとポジティブな感じにしちゃったのは個人的には良くない。


「暗くしたいわけじゃないんですけどね。含みを持たすっていうか、文芸ちっくなラストってあるじゃないですか」

「ふふっ、文芸ちっく」


 部長が可笑しそうに言って口元に手を添える。

 これは揶揄ではなくて、まだ文芸を真似ているだけなんだと常々思っている。なのでそれっぽいラストは見様見真似ながらも気を配り、最後に丁寧に句点を打つ。


「そういえば、句点が入ると怒ってるみたいだから絵文字、とかって話が一時期ありましたね」

「あーあったね。可愛いのにね、ちっちゃい丸が転がっててね」


 可愛いかどうかはちょっとアレだけど。「ピリオドをうつ」みたいな表現もあるくらいだし、小さく丸で結ぶ行為そのものが、すごく良い。と思うんだけどなぁ、と勿体ぶって回を分けた割に、字数が進まずこぼれ話挿入。


 さて、自動販売機に行き先が変わった事、これはこの作品と相性の良い結果となった、と言うか幸せな偶然を生んだのだと思う。

 今も耳に残る飲料メーカーのCM、一枚だけの硬貨やプルトップなどのアイテム。

 そういえば、プルトップって昔は缶から外れたんだよね。それを指輪みたいにはめたり、紐を通して首から下げたり。


「硬貨投入口に入れて、返却レバーをカシャカシャやったら100円玉に変わらないかなぁ、なんてね」

「そうそう、でも聞こえてくるのはプルトップの落ちる軽い音だけで」


 という様々なノスタルジーを、普遍的な田舎の風景にたっぷり込め。ジュースの種類、順番にもちょっと拘った。

 

 あと、このあたりから携帯端末の文章読み上げ機能を使って、耳で確認する作業を取り入れ始めた。

 誤字脱字、読点の位置とバランス、変な言い回し。特に、スマホで書いてるのだが、エンターの上が削除で、よく「は」とか「が」とか気づかず消しちゃってる。そんなところを見つけるのに、読み上げは個人的には欠かせない作業だ。

 また耳で聞くと、目で追うのとは違う文章のリズムを感じられると思う。


「文節が五とか七に収まると気持ち良いんですよ」


 『夏の思い出』で言うと初っ端からこうだ。

 かさかさと(五)葉擦れと蝉の(七)鳴き声が(五)

 とか、いつかの夏の(七)青時雨。(五)

 さらに、わたしは雨が(七)好きだった。(五)

 などなど。


「交通標語かな?」


 ぐさり。最近はそれに流されて、しつこくなりがちなので気をつけなければいけない。


「そういえば。書けないって言う割にイマジナリー文芸部も一万文字超えたね」

「イマジナリー部長とイマジナリー部員の皆さんのおかげです······ああ、フリですね?」


 眼鏡の奥で、三日月みたいに目だけで笑う部長に向かって、軽く咳払いをひとつ。


「どうしてこんなに協力してくれるんですか?」

「ふふっ、なんででしょう?」


 そう言って、部長はスカートをひらり翻し、イマジナリー部室を後にする。

 

 ひとり残された部室には、青い風に吹かれて揺れる言の葉の、かさかさ言う音だけが聞こえるようだった。


 ツンデレムーブを自重しつつ、文芸ちっくなエンディング。さすがは部長、とても良い。

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