Chapter1 黒斗と大怪盗(たぶん泥棒)

episode1 怪盗

放課後。

家に帰った黒斗はごちゃごちゃになっていた自室の片付けをしようと思い、クローゼットを開けた。

「あちゃー、きったねー!」

黒斗はほこりをはらいながら奥の方に行った。

「やべーなこりゃ。中学のとき、3年間ほったらかしてた結果かぁ」

クローゼットの奥には、今まで気づいていなかったが古ぼけたダンボールがあった。

黒斗はそのダンボールをクローゼットから取り出すと、ほこりをはらってふたを開けた。

すると、中から一着の衣装が出てきた。それは、千星がスマホで見ていた「怪盗星青玉スターサファイア」の衣装だった。

「す、スターサファイア⁉︎なんでこんなんあるんだよ??」

黒斗は驚き、急いでダンボールからその衣装を取り出した。

黒斗はその衣装のほこりをはらった。

 紫のシルクハットには三日月の飾りが1つ、羽の飾りが2つ付いていた。

他にも、赤いネクタイがついた紫のスーツに、紫のマントが出てきた。

「ん?」

ダンボールの底に、まだ何かあった。

三日月のマークがついたカードだった。

黒斗はカードを裏返した。

それには、黒斗がまだ幼かった頃に失踪した父親・佐々木遊斗ささきゆうとが書いたメッセージがあった。


『黒斗、今まで秘密にしていたが、ここで話してしまおうか。オレは「怪盗星青玉」だったんだ。敵は「犯罪組織ネオン」—』


この後のメッセージは、汚れていて文字が読めない。


(——あれっ? こんなもの、家にあったっけ? しかも、自分の失踪した父親がその怪盗の正体だったなんて、いったいどういうことー⁉︎)

黒斗はそう思いながらも言った。

「怪盗・・・。敵が犯罪組織ネオン・・・。いいじゃねえか、今週末にある『鹿野グループ30周年記念船上パーティ』で初公開の宝石を狙ってやる!」

そのとき、茶髪の髪をポニーテールにした黒斗の母親、大女優かつアイドルの香穂かほが黒斗の部屋のドアをこっそり開けて覗いていたのに、黒斗は気づいていなかった。

「黒斗、怪盗になるときが来たのね・・・」

香穂は部屋を覗きながらつぶやいた。

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