第4話 女勇者ユウカの勉強

【女勇者 柚木優花ゆずき ゆうかは休日、彼氏である明守と過ごしていた! 

 年中無休だった戦士にとって、この世界には休日が存在する。

 それは身も心もリフレッシュするための時間。

 しかしこの日は、女勇者ユウカの願いで休日にも関わらず、二人で自宅学習するのであった!】


「優花ちゃん、どこが分からないの?」

「え~っとね……」


【ここは彼氏明守の部屋

 共にテスト勉強をするということで、彼氏の家へとやってきた女勇者ユウカ。

 それは単なる名目で、これは逢瀬にほかならなかった!】


【愛する彼氏の部屋で、二人っきりのユウカ。必然とペンを握る手にも力がこもる!】


 バシッ!


【シャーペンは8,638のダメージを負った!

 シャーペンは粉々に砕け散った!

 女勇者はマイナス150円の負債を手に入れた!】


 また折ってしまったわ……

 これで何本目なの?


 せっかく二人っきりになれたっていうのに……

 緊張しちゃって。

 つい、筆圧を込めちゃうと、こんな簡単にシャーペンが折れてしまうなんて……


 いとも容易くペンを粉砕してしまう女の子なんて!

 これじゃあ、明守くんに嫌われちゃうに決まってる!!


 なんとか明守くんの前では、この力を抑え込まないと!


「はぁ~~~」


【自分の不幸に嘆くと、自然とため息が出てしまうユウカ】


「どうしたの? 優花ちゃん? ため息なんてついちゃって?」

「え?」


 ま、まずい!

 これじゃあ、まるで私が明守くんと勉強してるのが、退屈に感じているみたいに思われちゃう!


「あの、なんだか、全然問題が解けなくてね」

「どれどれ?」 


【ユウカの横に座り、問題集を覗き込む明守!】


 ち、近い!

 明守くんの顔が、ちょっと背を伸ばせば、唇と唇が重なり合いそうなくらいの距離!!


 これはチャンス!!


 長らく異世界に居たせいで、高校の科目なんか、すっかり忘れちゃったのは事実。

 馬鹿な子と思われるのも悲しいけど、逆にこの状況は美味しいかも!


「あ、あのね、問題、分からないんだけど……

「これはね……」


 ああ!

 愛しの彼が真横で!

 無知な私を指導してくれるなんて!

 このまま夜の授業もレクチャーしてくれないかしら!!!


【女勇者ユウカは魅了されていた!!】


 バキッ!!


【シャーペンは13,793のダメージを負った!

 シャーペンは粉々に砕け散った!

 女勇者はマイナス150円の負債を手に入れた!】


 し、しまったわ……

 興奮のあまり、またもやシャーペンを強く握りしめて。


 明守くんも驚いてる。

 目の前で私がペンを握りつぶしたことに!


 こ、このままでは、いけないわ。

 なんとかしなくちゃ!

 日常生活に支障が!


 ……あぁ、

 そういえば異世界に、

 力を封じる魔法の指輪があったわね……


 うっかり私が宝箱から見つけて、そのまま身に付けたりしたもんだから、レベルが一気に下がっちゃって。

 呪われた装備だから外せないっていうんで、私が強引に握り潰した、

 あの指輪が今あれば……


「はぁ……指輪が、あったらなぁ……」

「えっ!? 指輪??」


【悩まし気な表情のユウカが発した“指輪”という単語を耳にした明守は、激しく動揺した!】


 もしくは、私が振り回しても折れなかったクリスタルの剣か、ダイヤモンドの剣があれば。

 その素材で作ったシャーペンなら、きっと折れないはず。


「クリスタルか……」

「えっ? 水晶の?」


「ダイヤモンドが……」

「ダイヤモンドの? 指輪!?」


「あれが、あればなぁ……」

「…………」


「…………」

「…………優花ちゃん?」


「なに? 明守くん?」

「あ、あの……

 まだ僕、

 学生だし、

 お金ないけど、

 そのうち就職して、

 立派な社会人になったら、

 ちゃんと自分で稼いだお金で、

 優花ちゃんに指輪をプレゼントしたいから、

 その……

 すぐには出来ないけど、

 必ず渡すから、

 もう少し、待っててくれるかな?」


 え?

 ええ!?

 なになに!?

 どうしたの?

 急に真剣な顔して、指輪の話!?

 プレゼントしてくれるって!?

 こ、こんなところで?

 き、急に?


 ぷ、プロポーズ!!


 いくら二人っきりだからって!!


 なんて大胆なの!!


【お互い激しく勘違いしていた! そしてユウカは錯乱していた!!」


「あ、明守くん、その、気持ちはありがたいけど、なんかちょっと気が早いっていうのか……その……と、とにかく、今はテスト勉強に集中しましょう!!」

「そ、そうだね、取り合いず勉強しよっか」


 バキッ――!!


【女勇者ユウカは混乱している! 

 会心の一撃!!

 シャーペンは295,207のダメージを負った!

 シャーペンは粉々に消え去った!!

 女勇者はマイナス150円の負債を手に入れた!】

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