第4話 とあるメイドと王子の話。 1
カリル・フェインはこの国の第三王子であるアシェイド・ヘザラ・モナ・カイオスの正式にして唯一の専属侍女である。
当然表向きの第三王子として振る舞う場合には専門教育を受けた数多の侍女や執事が支度などの詳細を行うが、彼ら彼女達はその日の担当者であって決して専属ではない。
そもそもアシェイド自身が ”第三王子” として王城に居ない事が大半で、殆ど不在の主の為に常駐の侍女や使用人を待機させるのは金と時間の無駄だと本人が切り捨てているからである。
とは言え王子ごとに予算や人員は配分されており、専用の部署も存在はする。
何事も見栄と建前で生きている貴族、その最たる存在である王族故にその存在を無くすなどと言うのは有り得ない(少なくとも貴族の世界に於いては)。ならばどうするのか?
彼の答えは、最高峰の水準を求められる王城レベルの侍女や使用人を育成し派遣する、人材派遣業部門化である。
元々第三王子に割り当てられていた組織や人員を元手に王子の私費を投じて育成機関を設置、主に高位貴族へ向けて大規模な茶会やパーティの開催時にまるで以前から仕えていたかのような顔をしてしれっと給仕等に参加させるのである。
利用する側は王家の組織である事は知っていても、第三王子の直轄である事は知らされていない。幾ら日陰などと言われていようが王子は王子。権力狙いの下らない擦り寄り等が多くなれば、不要な王子間の軋轢を生みかねないからだ。
尤も、第一王子や第二王子は第三王子が色々と手広くやらされている上にそれらを難なく
第一王子曰く『表を背負うのだって一苦労なのに、私程度の能力では裏までとても手は回せないよ』。
第二王子曰く『俺は物事を深く考えるのが不得手だからな。得意な奴に任せるさ』。
因みに第四王子は『アシェイド
思いの外、しれっと末恐ろしいお子ですやん……。
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