第2話 残念、ああいうのは最初だけみたいですよ?
聖蹟マドゥロス祈念会館、通称会館。
大いなる意志マドゥロスが降臨し奇跡を起こした場としてマドゥロス教によって聖地指定され、主要施設である豪華絢爛な祈念会館が聖地の脇に建てられている。
要は宗教施設にありがちな、ガチガチの金稼ぎスポットである(※某歴史家がとある宴の場でうっかり漏らした私的な見解です)。
近隣には半ば常設と化した露店群がある上に街の中心部にほど近くやたらと目立つ為、人々の待ち合わせ場所としてよく利用されている。
「おっちゃん、ぬっるいエールといつもの!」
「ぬるいは余計だバーロー……ほらよ」
無愛想に見える大柄な酒場兼食堂のマスターの口癖と共にドスンとカウンターに置かれるエール(常温でかなりぬるい)。少しして追加で大量の輪切りイモドキ(イモ代わりの甘くないバナナ)と少しの葉野菜と腸詰めの炒めが盛られた皿が来ると、白銀の美人メイド(自称)ことカリル・フェインはカウンターに置かれた小箱に手を翳してショワン!と会計を済ませる。
いわゆる魔導遠隔決済という物で、各ギルドの預金口座と遠隔決済機能が付与された魔導具(ギルド証兼用やリング型、ブレスレットなど様々)を持っていれば利用出来る。各ギルド間の調整と言う名の醜い足の引っ張り合いやら莫大な利権の落とし所やらのせいで十数年は普及が遅れたと揶揄されつつも、手軽さと物理的な身軽さを好む冒険者を中心に利用が進んでいる代物だ。
「……んで、首尾のほうはどんな感じ?」
「アカンアカン、もうしょっぱぁて話にならんわ。ありえんぐらい
受け取ったその場で炭酸を入れてキンキンに冷やしたエール(付与完了まで一瞬かつほぼ無意識)を片手に、ちょびちょびと二本の細い棒状のオハシで炒め物を器用につまんでは口に放り込む。当然オハシは彼女の私物で、木製と金属製を常時ストックしているらしい。
カリルの左隣で日替わり謎肉炒め(その日最安値の食える肉)を処理しつつ話を振ったのは、男のような女のような、いまいちパッとしない容姿の推定人族。先程のゴミ掃除の時に魔導通話をしていた相手である。
「そりゃキミにとっちゃあスライムみたいなもんだろうけど、この辺じゃそれなりにのさばってた奴だったんだがね~」
単純な強さや
関係が近しいのか単に馴れ馴れしいのか、相手は彼女の左腕に軽く触れる。すると視界に小窓が開き、ちょっとした家でも買えそうな金額が
これはある組織が運営する闇銀行的な
実際の引き出しは隠された場所にある闇支店でのみ可能であるのが不便だが、その組織内で処理が完結している為に秘匿性が非常に高い。
ではその組織が客から預かった金を持って突然消えてしまっても文句が言えないのではと思うだろうが、その可能性は限りなく低い。何故ならばその組織の運営者が国絡みであるからだ。
どこの世にも必要悪というものは存在する。完全に消せないのならば上手く利用して管理してやればいい。
表沙汰に出来ない事を国主導でやれば、そんなものは元から存在していないのと同然になる。国が知らんぷりをしさえすれば良いのだから。
一見矛盾しているようにも思える二つの事柄だが、事は金が絡む問題故に万一どちらかが裏切れば手痛い結果が待っている。それも大勢の者が預かり知らぬ裏側でだ。
それをひっそりとやり続けるのも突然無かった事にするのも国の自由だが、影で動く数多の組織が黙って従う筈も無く。
下手にやれば国自体が引っくり返されて終わりまっせと。
時の為政者がマトモならば、
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