第7話 きききの花火
ぱっとひかってさいた
きっとまだ おわらないなつが
「……これ、パクリですよね」
Aが、Bに言った。
「きききまで来て、ネタが尽きたか」
「異常現象は非人道的ではありますが、現象の神秘的な感じや謎の詩に心惹かれる気持ちも、わからなくはないんですよ。でも今回は……」
「著作権的に……」
「人類が滅んだら著作権も何もありませんが、ちょっとこのプライドのなさにはガッカリですね」
同じことを感じたカクヨムユーザーから、きききの作品に非難のコメントが殺到している。
「あ、非公開になりましたよ」
「反省したのか?」
― 十分後 ―
………………
…………
……
線香花火の最後
ぼたりと落ちた火の玉が
もう一度咲いた
……
…………
………………
「まだあのパクリを引きずってますね」
「咲いた、とか、もう一度、とか」
「自分の表現したいことを、ぴったり表してるのがもうあの歌詞だったんですね」
「今回は、火の災厄が来るってことだな」
この頃には、この詩によって引き起こされる異常現象は、人類を滅亡に誘う災厄として認識され始めた。
― 一時間後 ―
上空に火球が現れ、滴り落ちた。
大地に着地した火球は、花火のように、中心から遠ざかりながら辺りを焼き尽くす火の筋を幾重にも生み出した。
だが、すぐさま大地が裂け、その火の筋を遮る水の壁が湧き出てきた。
「うまくいきましたね」
Aが微笑んで言った。
「ああ……これだけ迅速に防御できたのは初めてだ」
きききの最初の詩で災厄のイメージを掴んだ二人は、すでにいくつかの防御の詩を作っていた。
そして、一回目の出現場所で実際の災厄を目視した後、すぐさま相応しい詩を投稿したのだ。
「お祝いでもしますか?」
「あ、うん。気持ちはそうだな」
「何を頼みましょう。シャンパンとか入れますか?」
「いや! 俺、そういうのわかる人間じゃないから、いいよ」
「人類滅亡したら、食べたいものも食べられないんで、贅沢した方がいいですよ」
「だとしても、いいよ。興味ないからそういうの」
「そこまで言うなら。じゃあ、全国のうまいものカタログ置いとくんで、選んでください」
そう言って、AはBに小冊子を渡した。
「一度、食べてみたいのがあったんだよな……」
Bはカタログをめくった。
Aは手元の端末を確認する。
かかかの災厄までで、世界人口の5%が消滅していた。
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