第6話 かかかは進む

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かかか さん



がたん ごとん

がたん ごとん

がしゅがしゅ がしゅがしゅ がしゅがしゅ




「リズムと重さを感じる何か、ですかね」


Aが言う。


「がたんごとん、で電車かなと思ったけど」


Bが言う。


「電車を爆破させるとか?」


「まあ、無くはないけど……。それじゃ普通だよね」


「あらま。ついに彼らの想像力に追いついてきましたか」


「こんだけ書いてれば……」


「それにしても、あいうえお、で終わりませんでしたね」


「50アカウントあるってことか……」


「頑張んないと、人類滅亡しますね」


「……わかってるよ」


「最近元気ないですね」


「こんな缶詰生活で元気出るわけなくない?」


「僕がいるじゃないですか」


「はあ? なんでそれで元気が出ると思ったの?」


「結構僕、話し相手として喜ばれるんですよ。聞き上手だって」


「俺は、話をちゃんと聞かれた覚えないけど」


「そういえばそうですね。彼らへの対応に必死で、互いのことを知る時間をとってませんでしたから」


「……お前も、一応必死だったの?」


「ええ。そう見えませんか?」


「ああ……なんだか、ひょうひょうとしてるから……」


「誤解されやすいんですが、これでも人の心はあるんで」


「……俺ばっかりがんばってて、お前は何も感じてないのかなって思ってた。ごめん、そう思い込んでて」


「え? 別に思い込んでて構わないですよ。僕は1しか気にしてないけど、Bさんが100気にしてたら僕の1なんて0みたいなもんですから」


「ま、まあ、そうだけど。いや、そうじゃないな……なんていうか……」


Bは、少し沈黙して、言葉を探した。


「疑って、悪かった」




Bがそう言うとすぐに電話が鳴り、Aはすかさずとった。

パソコンを操作し、出てきた動画をBにも見せた。




果てしなく広がる青空と赤土の広大な大地。


二本の線が走る。


画面の右端から、蒸気機関車が現れた。


ふぁー……ん……


と、汽笛を鳴らしながら線の上を走り、地平線の向こうを目指していく。




「これが、突然現れたらしいです」


「……これだけ見たら、キレイだな」



車輪は力強く回り、煙をたなびかせて直進していく。



「この先は……?」


「世界の各国の大都市に。都市の内部にも、道路が割れて線路が現れてます。このまま行けば、人と車ははねられ、建物はぶち破られますね」


「そうか……」


「やっぱり、元気ないですね」


「キレイな景色だなって、思っちゃったから」


「景色だけなら、あああのだってすごかったじゃないですか」


「鉄道、好きなんだ」


「ああ、なるほど」


「消すよ、ちゃんと」


「はい、よろしくお願いします。今度、寝台列車の旅とか一緒に行きますか?」


「いや、なんでプライベートでも缶詰なの。より狭いし」



今度、っていつなんだろう。


そう思ったが、Bは黙っていた。

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