15.兄は救世主
シルビアとガンツのお茶会はすぐに開催された。
だか、ゆっくり話したことがないふたりは何を話して良いか分からず、お互い俯いている。
これではいけないと思ったシルビアが、意を決して話しかける。
「ああああの! ガンツ様は甘いものとしょっぱいもの、どちらがお好きですか?」
なんでこんな事しか聞けないの。もっと色々あるでしょう?!
シルビアの心は荒れ狂っていた。
「……あ、お……私は……甘いものが少々苦手でして……」
違うだろ!
せっかくシルビア様がお茶に誘って下さったのに、用意して頂いた菓子を否定してどうする?!
ガンツの心も、同じように荒れていた。そこに、救世主が現れた。
フィリップだ。手に1通の手紙を持っている。フィリップが目配せをすると、控えていた者達が全員部屋を出て行った。
「お前たち……何をやっているんだ」
「お兄様!」
「王太子殿下!」
「可愛い妹の求婚者殿を見極めたい。俺も参加して良いか?」
「「お願いします!」」
「……もうさっさと結婚しろよ……」
フィリップの呟きは、しっかり2人の耳に届いたようで、シルビアとガンツの顔が真っ赤に染まった。
「すいません……私が弱いから……」
「ガンツが弱かったら俺は赤子と変わらんぞ。シルビアだけだ、貴殿に勝てるのは」
「シルビア様は素晴らしいです。戦うたびに強くなっておられる」
「そ、そんな! 毎日修行しているだけですわ!」
「毎日コツコツ続ける、それがどれだけ難しいか。今日は身体が痛いから。明日は天気が悪いから。いろんな理由を見つけ出してサボる者も多いのです。休養は必要ですが、休養しすぎればあっという間に衰えてしまう」
「ガンツ様は毎日修行なさっておられるのでしょう?」
「ええ、もちろん。騎士の仕事もありますが、毎日きっちりやっております」
「素敵!」
「……こ、光栄です……」
「なぁ、もう父上と相談して結婚したらどうだ?」
「「それはいけません!」」
「お……私は、必ずシルビア様に勝ってみせます」
きっぱり言い切るガンツをうっとりと眺めるシルビア。
「……ガンツ様……」
目の前の王女様から向けられる好意が心地良く、ガンツの訓練は激しさを増していた。本気の訓練は終業後にひっそりと行う。リオン隊長がガンツの訓練を一度でも見ていたら彼を貶めようとは思わなかっただろう。
「あまり長くお待たせするつもりはありません。正々堂々、勝利して権利を勝ち取ってみせましょう」
うっとりとガンツを見つめるシルビアと、恥ずかしさで俯くガンツ。ふたりを愛しそうに眺めていたフィリップは僅かな笑みを浮かべ、持参した手紙を開けた。
「本題はこちらだ。今回の黒幕が分かった。こいつだ」
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