4 仲良くなりました(?)
第17話
毎月の決まりである初雪さんとの会合。
いつもなら許嫁と義妹の関係に眉をひそめる私は、初めて他のことを考えながら食事をしていた。
あのクズ男の典型例みたいな先輩と知り合ってからひと月が過ぎようかという今日この頃。それなりの頻度で私はあの人に呼び出されている。少なければ週に一回、多いと四回。
あの高級マンションに行くのにも行為にも慣れてきている自分がいる。
あずき先輩と関係を持ってから初めて初雪さんに会った今日。
もっと罪悪感を感じるかと思ったけどそうでもなくて。
初雪さんが私に対してそれなりの優しさを示していたらまた違ったのだろうけど。
この人は目の前の許嫁が処女だろうがなんだろうがどうでもよくて、それより隣の女の子の話の方がよっぽど重要なんだろう。
若干寝不足の頭で考え事をしていると、ふいに凛々しい顔がこちらへ向けられた。
「おい、聞いているのか?」
「へ?」
何を? 茉白の話?
「すみません。少し考え事をしていて。」
「いい度胸だな。まぁいい。今度の会談だが、お前は学業で忙しいだろうから茉白を同席させる。両親にはもう了承を得ている。」
「そうですか。」
私がそれだけ返すと、初雪さんは怪訝そうな顔をした。
古い氷榁と付き合いである企業の社長との会談に初雪さんが参加するということは、氷榁の正式な跡継ぎであると向こうに認知してもらうこと。
そこに同席するというのは、彼の婚約者として同じように認知してもらうということになる。それを「学業で忙しいから」なんて理由で茉白を代役に立てるあたり、浅いにも程がある。
いっそ「茉白と婚約したい」って言ってくれた方が清々しいのに。
でも今私はそれどころじゃないの。
どこかの誰かさんのせいで完全に睡眠の質が落ちて、成績維持とアルバイトの両立もしなきゃだから寝不足が続いてる。
どこかの誰かさんのせいで。
あずき先輩も紅家の跡継ぎなら、初雪さんみたいに色々とやらなきゃいけない事が多いはずなんじゃないの?
私から見たあの人はいつも遊んでるとしか思えない。そのくせ高級マンションに一人で住んでるし。あの人はよく分からない。
食事も終わり、氷榁家の人の送迎をいつもの事のように断った私は、一人でレストランを後にする。
「千夜子」
後ろから声をかけられて、見れば初雪さんが立っていて。珍しいな、と私は立ち止まりあまり期待せずに「どうしました?」と返す。
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