第15話
先輩の指が私も知らない私の弱い所を探してる。一つ一つ、確かめるように。
身体が反応すれば、忘れないように何度も触れる。その度に響く水音が、私の羞恥を掻き立てる。少しずつ、丁寧に暴いて、解されて。
私、まだ初雪さんの婚約者なのに。好きな人がいるのに。
「っ、ぁ」
私の中から指が引き抜かれ、紅先輩を見れば「んな顔すんな」と返された。
「いい?」
その質問に私はぼんやりする頭で深く考えずにうなずいた。
──ううん、本当は考えたくなかった。初雪さんへの罪悪感も、初めての相手が旦那さんになる人じゃない事も、純潔を手放す事への怖さも、この行為の先の事も、すべて。一度冷静になれば、狂ってしまう気がして。
私の足に手をかける先輩から、目を逸らした。
「っ、せん、ぱいっ、……ぃっ……!」
指と全然違うからさすがに痛くて、私はぎゅっと目を瞑る。
「力抜けって。力むと痛てぇぞ?」
力抜けって言われても、どうすればいいか全然分かんない。先輩のそれが私の中に押し入る感覚だけが鮮明だった。
身体の内側を引き裂かれるような、経験した事のない痛み。呼吸が乱れて、言葉にならない呻き声が喉を震わせる。いつの間にか溢れた涙を、先輩の指が優しく拭ってくれた。
「はー……きっつ……痛てぇ?」
私がコクコクうなずくと、先輩は私を抱き締めて頭を撫でた。その感触がやけに懐かしくて、気持ちよくて。
「あ……」
静かになった私を、先輩が不思議そうに見る。
「どした?」
「頭……撫でられるの久しぶりだったから……」
私の頭を撫でてくれた人は記憶にあるのはお母さんだけ。そのお母さんは私が十歳になる前に死んでしまった。
思えば、こうして誰かの体温をそばに感じるのも随分久しぶりかもしれない。
身体が鈍く痛んでるのに、心はなぜか安心していて不思議な気持ちだった。
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