第12話
ようやくキスから解放された私は、紅先輩の腕の中で息を切らしてどうにか立つ。
「やっぱいいねェ、純粋無垢な女のコは」
見上げれば、面白そうに細められた闇色の瞳に捉えられて。初めてその中に狂気を見た気がした。
「俺さぁ、お前みたいに男知らない子を快楽に堕とすの好きなんだけど。相手が氷榁の婚約者だって思うともっとゾクゾクするねェ。」
「だから、私と初雪さんは……、」
「関係ねーよ。不仲だろーがなんだろーが、今正式な婚約者はお前だろ?」
紅先輩の端整な顔が、私の耳元にグッと近づいた。
「今夜も来いよ、千夜子。お前の「初めて」、全部あいつから奪ってやるからよォ」
「行かなかったら?」と一応聞けば、「バイトしてんのバラすに決まってんじゃん?」ととびきりの笑顔で脅されて。そのまま先輩は屋上を去ってく。
私には拒否権も選択権も無いってこと?
一人残された屋上で、あの瞬間の、狂気を孕んだ紅先輩の瞳を思い出して背中がぞくりと震えた。
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