第51話 封印された過去

奈緒美と彩は、静子から「雪の女王」の伝説の背後に隠された村の過去についての話を聞き、さらに調査を進める決意を固めた。彼女たちは、村の歴史を掘り起こすために古い記録を調べ、その中でかつてこの村で起きた忌まわしい事件についての手がかりを探す。


村の資料室で、奈緒美は年代物の帳簿や記録を一つ一つ丁寧にめくりながら、過去に起こった事件に関する痕跡を探し続けていた。彩は隣で、村の有力者である山川一郎に関する記述を見つけ出し、その背後に潜む何かを感じ取っていた。


「見て、奈緒美。この名前、佐藤明美さんと同じ名字だわ。」彩は、古い記録の一ページを指さしながら言った。「この村で起きた事件に関わった人物のリストに彼女の家族が含まれているみたい。」


奈緒美は、そのリストに目をやると、静かに頷いた。「それで、彼女が再び村に戻ってきた理由が少しわかってきたわね。明美さんは、自分の家族が関わった過去の事件を調べるために戻ってきたのかもしれない。」


「でも、どうして彼女はそれを隠す必要があったのかしら?」彩は疑問を抱いたまま続けた。「家族の過去を知ることが、彼女にとって危険だったとしたら…」


奈緒美はその質問に答えることができず、ただ資料のページをめくり続けた。やがて、一つの古い新聞記事が彼女たちの目に留まった。そこには、村の有力者である山川一郎の家族がかつて起こした事件についての詳細が書かれていた。


「これだわ。」奈緒美は記事を指さしながら言った。「山川家は、村の外部と関わることで大きな問題を引き起こしたらしい。それを隠すために、村全体が協力して事件をもみ消した。そして、その事実が外部に知られることを恐れ、山川家は長年にわたって村を支配してきたのよ。」


「つまり、佐藤明美さんはその隠された事実にたどり着いたというわけね。」彩は理解し始めた。「それで、彼女は…」


「それで、彼女は殺された。」奈緒美は断定した。「彼女は村の暗い秘密を暴こうとしたため、山川一郎によって口封じされた可能性が高い。」


彩はその言葉に衝撃を受けたが、同時に全てのピースがつながり始めていることに気づいた。「明美さんは、自分の家族が関わった事件の真相を知ろうとしていた。でも、村の掟がそれを許さなかった。」


「そうね。」奈緒美は同意した。「そして、その結果として彼女は消された。村の平穏を守るために。」


その時、資料室の扉が再び開かれた。二人が振り返ると、そこには険しい表情をした山川一郎が立っていた。彼の目には怒りが宿り、彼の存在そのものが村の権力を象徴していた。


「ここで何をしている?」山川一郎の声には、冷たい怒気が込められていた。「この村のことを詮索するのはやめるんだ。外部の者には関係のないことだ。」


「私たちは、佐藤明美さんの死の真相を突き止めようとしているだけです。」奈緒美は毅然とした態度で答えた。「彼女がなぜ殺されたのかを知るために。」


「そのようなことを知る必要はない。」山川一郎は一歩前に進み、奈緒美に迫った。「この村のことは、この村の者が決める。外部の者が口を出すべきではない。」


奈緒美はその威圧に屈することなく、山川の目をじっと見つめた。「私たちは、真実を追求するためにここに来たんです。誰がそれを止めようとしても、引き下がるつもりはありません。」


山川一郎はしばらく沈黙した後、低い声で「覚えておけ。この村には、知らなくていいことがたくさんある。」と言い残し、扉を閉めて立ち去った。


彼が去った後、奈緒美と彩はしばらくの間その場に立ち尽くしていたが、やがて静かな決意を胸に、再び資料に目を向けた。


「私たちが今すべきことは、明美さんが何を見つけたのかを突き止めること。」奈緒美は力強く言った。「そして、それが彼女の命を奪った理由を。」


彩も深く頷き、二人は再び調査に没頭していった。

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