第47話 選択の岐路

NDSラボの暗い室内には、奈緒美たちの緊張感が漂っていた。佐伯の背後に潜む勢力とその計画の全貌を把握しようとする彼らにとって、これからの行動は命取りになるかもしれない。そのため、次の一手が非常に重要だった。


「これが最後のチャンスかもしれない…」奈緒美は深いため息をつきながら呟いた。「この計画の全貌を明らかにし、佐伯たちを止めるためには、私たちが持っている情報をまとめて一気に公表するしかない。」


「でも、そのためにはリスクが大きすぎる。」高橋は、端末に表示された情報を指さしながら言った。「佐伯たちは、私たちの一挙一動を見張っている。もし、ここで何かをミスすれば、私たちは全てを失うことになるかもしれない。」


「わかってる。」奈緒美は強い意志を込めて言った。「でも、これ以上何もせずに黙っているわけにはいかない。村瀬が命をかけて守ろうとした真実を、私たちが明らかにしなければならない。」


その時、彩がふと頭を上げ、ある考えを口にした。「もし、私たちが彼らの動きを逆手に取ることができたら…?」


「どういう意味?」高橋が彩の言葉に反応した。


「彼らが私たちの動きを見張っているなら、その情報を逆に利用するのよ。」彩は勢いよく続けた。「私たちが何か行動を起こすふりをして、彼らの注意をそらす。その隙に、別の手段で真実を公表するの。」


奈緒美は少しの間、彩のアイデアを考え込み、やがて微笑んだ。「それなら、相手に先手を取らせないようにできるかもしれない。私たちが偽の動きを見せれば、彼らはそちらに注目するわ。」


「それで、どうやって真実を公表する?」高橋は問いかけた。


「村瀬が残したデータを、信頼できるメディアに送信するのよ。」奈緒美は決然とした表情で言った。「彼らが報道すれば、私たちが手を下さなくても、全てが明るみに出る。」


「でも、その間に私たちが危険にさらされる可能性があるわ。」彩は心配そうに言った。


「その可能性は大きい。」奈緒美は冷静に答えた。「でも、ここまで来た以上、私たちはリスクを取るしかない。村瀬の意志を無駄にしないためにも。」


「やるしかないわね。」高橋も同意した。「このままでは終わらせない。」


奈緒美たちは、計画の最終段階に向けた準備を急いで進めた。彼らは偽の動きを作り出すための情報を細かく設定し、佐伯たちに気付かれないように慎重に行動した。


---


深夜、奈緒美たちは再び車に乗り込み、彼らが設定した「偽の行動」を実行に移した。目的地は、佐伯たちが注目している施設の一つであり、彼らの計画に関連する重要な場所だった。


「ここで少し派手に動いて、相手に警戒させるわ。」奈緒美は、車を停めて計画を確認しながら言った。


「でも、その間に本当の証拠を送信しなければ。」彩が緊張しながら続けた。


「高橋、送信準備は整ってる?」奈緒美が問いかけた。


「完璧だ。いつでも行ける。」高橋は自信を持って答えた。


奈緒美たちは計画通りに行動し、偽の情報を撒き散らすことで、佐伯たちの注意を完全にそちらに引きつけた。その間に、高橋は村瀬が残した真実のデータを信頼できるメディアに送信し、報道される準備を整えた。


「これで、全てが明るみに出る。」奈緒美は高橋の作業を確認しながら言った。


しかし、その瞬間、車の周囲に何者かの影が迫ってきた。彼らの動きを察知した佐伯の部下たちが、奈緒美たちを追い詰めるために動き出したのだった。


「ここからが本番よ。」奈緒美は冷静に言い放った。「村瀬の意志を、必ず守り抜く。」

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