第43話 真実の扉
深夜、NDSラボは一連の謎を解くために忙しく動いていた。村瀬正弘が残した暗号と、謎のファイルを解読する作業が進められていたが、その内容は徐々に明らかになるにつれ、さらに恐るべき事実を示唆し始めていた。
「高橋、ファイルの解析は進んでる?」奈緒美は疲れた表情を隠しながら、ラボの端末に向かって尋ねた。暗号を解く作業は困難を極め、さらに時間がかかることが予想されていた。
「少しずつだが進展はしている。」高橋の声は依然として冷静だったが、その奥には緊張が感じられた。「この暗号はただのコードじゃない。複数の層に分かれていて、まるで何かを隠すために意図的に作られたようだ。」
「それはどういうこと?」彩が疑問を口にした。
「要するに、この暗号は一つの真実だけじゃなく、複数の事実を覆い隠している可能性があるってこと。」高橋は画面に映し出された複雑なコードを指し示しながら説明した。「一つ一つの層を解き明かしていくことで、隠された真実にたどり着けるかもしれない。」
「でも、それには時間がかかりすぎる…」奈緒美は焦りを感じながらも、冷静さを失わないよう努めていた。「他に手がかりはないの?」
「実は、解析中にもう一つの手がかりを見つけたんだ。」高橋が少し間を置いて話し始めた。「村瀬が残した暗号の中に、特定の場所を示す座標が含まれていた。その場所が今回の事件の核心に繋がるかもしれない。」
「座標?」奈緒美が身を乗り出す。
「そう。解読した結果、郊外にある廃工場の座標が示されていたんだ。」高橋はその座標が地図上に示された画面を共有した。「村瀬はこの場所に何か重要な手がかりを隠していた可能性がある。」
「廃工場…?」彩は疑念を抱きつつも、その可能性を無視できないと感じていた。「じゃあ、そこに行ってみるべきかも。」
「今すぐに行くわ。」奈緒美は決断を下した。「高橋、引き続き暗号の解読を続けて。私たちは廃工場で何が隠されているのかを確認してくる。」
「分かった。気をつけて。」高橋は短く答えた。
奈緒美と彩は、すぐに車に乗り込み、高橋が示した座標へと向かった。夜の闇が深まる中、彼女たちは廃工場に到着した。工場は長い間使われておらず、廃墟と化していた。窓は破れ、草が生い茂り、工場内には誰もいないようだった。
「ここに本当に何かがあるのか…?」彩が不安げに言った。
「村瀬が残した座標が示している以上、何かがあるはずよ。」奈緒美は確信を持って答えた。「でも、気をつけて。ここが安全とは限らない。」
二人は懐中電灯を手に、廃工場の内部へと足を踏み入れた。暗闇の中、工場内は静まり返っており、まるで時間が止まっているかのようだった。廃れた機械や錆びついた鉄骨が不気味にそびえ立ち、異様な雰囲気を醸し出していた。
「どこから探す?」彩が緊張しながら尋ねた。
「まずは工場の中心部を探ってみよう。」奈緒美は冷静に指示を出した。「村瀬が隠したものがあるとしたら、重要な場所に置かれているはず。」
二人は慎重に進み、工場内を調べ始めた。床に散らばる古びた書類や、使われていない機械の山を慎重にチェックしながら、彼女たちは手がかりを見つけようと必死だった。
「奈緒美、こっちに来て!」彩が突然声を上げた。
奈緒美が急いで駆け寄ると、彩が指し示した場所には、床下に続く秘密のトラップドアが隠されていた。工場の埃っぽい床の下にこんなものが隠されているとは、全く予想外だった。
「これが村瀬が残した手がかりかもしれない。」奈緒美は慎重にトラップドアを開けた。
中には古い木製の箱が収められており、その上には村瀬の名前が記されていた。「これが…真実の鍵なのか…?」
奈緒美は箱を開け、その中に収められていた書類とUSBメモリを取り出した。書類は古びており、手書きで書かれたメモがびっしりと詰まっていた。USBメモリには、村瀬が遺したデータが記録されているに違いなかった。
「これを持ち帰って、高橋に解析してもらおう。」奈緒美は書類とUSBメモリを慎重に持ち上げた。
「でも、これが本当に全ての答えを導き出してくれるのかな…?」彩は疑念を拭い切れない表情で言った。
「それはまだ分からない。」奈緒美は冷静に答えた。「でも、これが真実に近づくための重要な手がかりであることは間違いないわ。」
その時、外から車のエンジン音が響いてきた。二人は一瞬にして緊張感を取り戻し、工場の入り口の方を注視した。暗闇の中、工場の外には何者かが接近してくる気配があった。
「誰かが来た…!」彩が声を潜めて言った。
「急いでここを出るわよ!」奈緒美は直感的に危険を察知し、彩を引っ張ってトラップドアを閉め、工場内を駆け出した。
外に出ると、見知らぬ黒い車が工場の入口に停車していた。何者かが車から降りてきて、工場内を探し始めた。
「追跡者かもしれない…早く逃げよう!」奈緒美は彩と共に工場を離れ、闇に紛れて車へと向かって走り出した。
二人は何とか車に乗り込み、エンジンをかけてその場を後にした。暗い夜道を全速力で走り抜け、追跡者の目を逃れながら、NDSラボへと急いだ。
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