第40話 警報と追跡

赤い警告灯が施設内を不気味に照らし出す中、奈緒美と彩は全身に緊張感を走らせながら研究室からの脱出を試みていた。警報音が耳をつんざくように響き渡り、まるで彼女たちの行動を全て監視しているかのようだった。二人は迅速に行動し、研究室を後にすると、次々と廊下を駆け抜けた。


「まずい…完全に罠だったかも。」彩が息を切らしながら呟いた。


「ここを出ないと、何が起こるかわからない。」奈緒美は冷静さを保ちながらも、緊急事態に対処するための判断を下していた。「何としても脱出ルートを探すわよ。」


施設の内部は迷路のように複雑で、逃げ道を見つけるのは容易ではなかった。さらに、警報音が鳴り響く中で、施設内のセキュリティが次々と作動し、脱出の道を閉ざしていた。


「こんなことになったら、無事に脱出できるかもわからないね。」彩が不安を口にする。


「絶対に出られる。私たちが諦めない限り。」奈緒美は強い決意を持って答えた。「高橋に連絡を取って、施設の見取り図を確認してもらうわ。それで最短の脱出ルートを探す。」


奈緒美は素早くスマートフォンを取り出し、高橋に連絡を取った。「高橋、警報が鳴って施設が封鎖されそうなの。すぐに施設の見取り図を送って、最短の脱出ルートを教えて。」


高橋の声が緊張感を漂わせながら返ってきた。「了解、すぐに調べる。少し待ってくれ。」


奈緒美と彩は、高橋からの情報を待つ間も、警戒を怠らずに施設内を進んでいた。次々と現れるセキュリティゲートや監視カメラの視線を避けながら、彼女たちは冷静に行動していたが、その心中には焦りが募っていた。


数分後、高橋からの返信が届いた。「見取り図を送った。施設の南西側に緊急脱出口がある。それが唯一の逃げ道だ。」


奈緒美は高橋が送ってきた見取り図を確認し、彩と共に南西側へと向かって走り出した。「南西側に緊急脱出口がある。そこを目指すわよ。」


二人は必死に走り続けた。廊下は次第に狭くなり、照明も暗くなっていく。まるで施設全体が彼女たちを閉じ込めようとしているかのようだった。警報音はさらに激しく鳴り響き、施設内の空気がますます緊迫していった。


「奈緒美、ここで本当に出られるの?」彩が息を切らしながら問いかけた。


「出られる。絶対に。」奈緒美は強く答えた。「でも、急がないと危険が迫ってる。」


その時、二人の目の前に巨大なセキュリティゲートが立ちはだかった。ゲートは重厚な鉄製で、容易に開けられそうにない。


「これを突破しないと先には進めない。」奈緒美が焦りを抑えながら言った。


「でもどうやって…?」彩が不安げに尋ねた。


「待って、高橋からの情報がまだあるかもしれない。」奈緒美は再び高橋に連絡を取った。「高橋、南西側のゲートに到達したけど、突破できそうにない。何か方法はない?」


高橋は少しの間沈黙し、何かを調べているようだったが、すぐに答えが返ってきた。「そのゲートには非常用の解除装置があるはずだ。周囲をよく探してみてくれ。」


「分かった、ありがとう。」奈緒美は周囲を見回し、ゲートの近くにある小さなパネルを発見した。「これが解除装置ね。」


奈緒美は解除装置のカバーを外し、操作を開始した。パネルに表示されたコードを慎重に入力し、ゲートのロックを解除しようと試みた。緊張の一瞬が過ぎ、やがてゲートがゆっくりと開き始めた。


「やった!」彩が安堵の声を上げた。


「急ごう。出口はもうすぐだ。」奈緒美は彩を促し、ゲートを抜けた先へと進んだ。


しかし、施設内の警備がすでに動き出していた。彼女たちの進む道に何人かの警備員が立ちはだかり、二人を捕らえようとした。


「まずい、警備が来た。」彩が焦りを見せた。


「ここで捕まるわけにはいかない。何としても突破するわよ。」奈緒美は素早く警備員の動きを見極め、隙を突いて彼らの間をすり抜けた。


彩もその後に続き、二人は警備員たちの追跡を振り切るために全力で走り出した。追跡は激しさを増し、施設内のどこに逃げても追ってくる警備員たちに二人は追い詰められつつあった。


「もう少しだ…出口はすぐそこ!」奈緒美が声を上げた。


二人は全力で走り抜け、ついに施設の南西側の緊急脱出口に到達した。ドアを開けると、冷たい外の空気が二人を包み込み、暗い夜空が広がっていた。


「やっと出られた…!」彩が息を切らしながら言った。


「でも、まだ安心できない。これからが本番よ。」奈緒美は外の風に吹かれながら言った。「村瀬が隠していた秘密、そしてこの施設で行われていたこと…全てを解明するまで、終わりじゃない。」


二人はそのまま逃げ続け、施設の裏手にある森の中へと駆け込んだ。警報音は次第に遠ざかり、施設の明かりが森の木々の陰に隠れていった。


「これでしばらくは安全かもしれないけど、時間がない。」奈緒美が警戒を緩めないまま言った。


「これからどうするの?」彩が尋ねる。


「まずは高橋と連絡を取って、ここから安全な場所に避難する。そして、施設で見つけたデータを分析して、村瀬の死に何が関わっていたのかを突き止める。」奈緒美は決然と答えた。


「分かった。私も一緒に頑張るわ。」彩が強く頷いた。


二人は森の中を進みながら、高橋に再び連絡を取った。無事に脱出できたことを報告し、次なる行動の準備を進めることにした。

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