第39話 闇の施設

NDSラボのメンバー、奈緒美と彩は、ついに村瀬正弘が関わっていた秘密の研究施設に到着した。施設の外観は、無機質で冷たいコンクリートの壁に囲まれ、見る者に不安を抱かせる雰囲気を漂わせていた。空は曇天に覆われ、寒風が肌を刺すように吹き付けていた。施設の前に立つ二人は、これから直面するかもしれない困難を予感し、緊張の面持ちで入り口に向かって歩みを進めた。


「ここが村瀬が通っていた場所か…見た目以上に不気味ね。」彩が低い声で呟いた。


「確かに。でも、ここに入らないと真実にはたどり着けない。」奈緒美は冷静さを保ちながら、彩に向き直った。「準備はいい?」


彩は大きく息を吸い込み、頷いた。「もちろん。何があっても一緒に乗り越えるわ。」


二人は施設の厳重なセキュリティシステムに直面しながらも、用意周到に進行していた計画を実行に移し始めた。高橋剛から事前に提供された情報を元に、セキュリティを解除するための操作を行い、施設内への潜入を試みた。


「ここまでの道のりは意外と順調ね。でも油断は禁物よ。」奈緒美がセキュリティドアのロックを解除しながら言った。


「うん、油断するとすぐにトラブルに巻き込まれる。」彩も慎重な態度を崩さない。「それにしても、この施設、まるで迷路みたい…何か意図的に作られている感じがする。」


「たしかに、普通の施設じゃないわ。」奈緒美は施設内の複雑な構造を目で追いながら、これが意図的に設計されたものだと確信した。「何か重要なものを隠しているのは間違いない。」


施設内は静寂に包まれていたが、その異様な雰囲気が二人を圧迫するように迫っていた。暗い廊下の奥には、無数のドアが並んでおり、それぞれが何を隠しているのか分からないまま、二人は足を進めていった。


「奈緒美、ここに何が隠されているのか、本当に知りたい?」彩がふと口を開いた。


「もちろん。」奈緒美は断言した。「どんなに危険が伴おうと、私たちの使命は真実を追求すること。村瀬の死の謎を解くために、ここで見つけたものがすべてのカギを握っているかもしれない。」


その時、二人は突如、施設の奥から聞こえてきた微かな音に気づいた。まるで金属がこすれるような音だ。二人は目配せし、音のする方へと向かっていった。


「この音…何か機械が動いているのかも。」彩が声を潜めて言った。


「かもしれない。」奈緒美は警戒心を強めながらも、音の源を探った。


そして、二人がたどり着いたのは、大きな鋼鉄製の扉だった。扉の前には、鍵付きのパネルが設置されており、簡単に開けられるものではないことを示していた。


「この扉の向こうに何かがある…それも、かなり重要なものが。」奈緒美は決意を込めて言った。


「でも、どうやって開ける?」彩が疑問を口にする。


「高橋に連絡して、暗号化された鍵の解除方法を教えてもらうわ。」奈緒美は素早くスマートフォンを取り出し、高橋に連絡を取った。


「こちら高橋。進捗はどう?」高橋の冷静な声が返ってきた。


「今、施設の奥にある鋼鉄製の扉の前にいるの。暗号化された鍵がかかっているから、解除方法を教えてほしい。」奈緒美が状況を伝えると、高橋はすぐに解析作業を開始した。


「少し待ってくれ。解析に時間がかかるかもしれないが、必ず突破口を見つける。」高橋の声は落ち着いていたが、緊張感が伝わってきた。


その間、奈緒美と彩は扉の前で息を潜め、緊迫した空気の中で高橋の解析結果を待った。


数分後、高橋から連絡が入った。「解析が完了した。パネルの隅に小さなボタンがあるはずだ。それを押してから、コードを入力すればロックが解除される。」


奈緒美は指示通りにパネルの隅を探し、小さなボタンを見つけた。「これね。じゃあ、コードを入力するわ。」慎重に高橋から伝えられたコードを入力すると、扉が重々しく開いた。


「開いた…!」彩が驚きの声を上げた。


二人はゆっくりと開いた扉の向こうへと足を踏み入れた。そこには広大な研究室が広がっており、無数の試験管や実験装置が並んでいた。そして、目の前の巨大なスクリーンには、何かのデータが映し出されていた。


「ここが…村瀬が関わっていた研究施設の中枢部なの?」彩が呆然としながら言った。


「そうみたいね。」奈緒美もまた、その光景に圧倒されていた。「この施設では、一体何が研究されていたのか…」


二人は周囲を見渡しながら、ゆっくりと進んでいった。その時、スクリーンに映し出されたデータが次第に明らかになり、二人は息を呑んだ。


「これ…人間の遺伝子データ?」彩がスクリーンに映るデータを見て驚愕の声を上げた。「こんな大規模なデータが…一体何のために?」


「まさか…人間の遺伝子操作が行われていたのか…?」奈緒美の脳裏に次々と疑念が浮かんだ。「村瀬が何をしていたのか、そしてそれが彼の死にどう関係しているのか…」


しかし、その瞬間、施設内の警報が突然鳴り響いた。赤い警告灯が点滅し、施設全体に緊張感が走った。


「警報…?何が起こっているの?」彩が不安そうに問いかけた。


「分からないけど、何かが迫っていることは確かだわ。ここから急いで脱出する必要がある。」奈緒美はすぐに判断を下し、彩の手を引いて研究室を後にした。

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