第37話 隠された真実の鍵

村瀬正弘の自宅に設けられたNDSラボの臨時調査室。奈緒美、彩、高橋剛は、手に入れた新たな証拠に対して一斉に目を光らせていた。村瀬の書斎から見つかった古い日記、隠し部屋のパソコン、そして発見された未送信の手紙。これらが一体どのように結びつくのかを解き明かすことが、彼らの次なる使命だった。


「まずはこの手紙を読み解こう。」奈緒美は緊張感を漂わせながら、村瀬が書き残した手紙を広げた。手紙は意外にもシンプルなもので、彼が密かに誰かに宛てたものであった。だが、その内容は驚くべきものだった。


「『私は彼らに警告したが、無駄だった。真実を知る者は皆、消される。だが、この手紙が届く頃には、私の意思は既に伝わっているはずだ。もしこの手紙を読んでいるなら、彼らに伝えてくれ。私の死は無駄にはならない。』」奈緒美が手紙の内容を読み上げた。


「彼らって一体誰のことだろう?」彩が不安げに尋ねた。


「そこがポイントだね。」奈緒美は考え込みながら手紙を見つめた。「村瀬はこの手紙で何かを伝えようとしていた。彼の死が無駄ではないと信じていたということは、彼が何らかの計画を知っていたか、もしくは関わっていた可能性がある。」


「それにしても、ずいぶんと意味深な書き方だよね。」高橋が言った。「これが誰に向けたものなのか、それが分かれば事件の真相に近づけるかもしれない。」


奈緒美は頷き、手紙を慎重に折りたたんだ。「高橋、君はあのパソコンのデータ解析を進めて。村瀬が持っていた秘密がそこに隠されている可能性が高い。」


「了解。」高橋はすぐにパソコンの前に戻り、解析作業を再開した。


奈緒美はそのまま日記のページをめくり、村瀬が残した言葉の断片を繋ぎ合わせていた。「彼の日記には何度も『彼ら』という言葉が出てくる。どうやら村瀬は何か巨大な組織か、陰謀に関わっていたみたい。」


「でも、それが一体何なのかがまだ分からない…」彩が呟いた。


「そう、まだ全貌は見えていない。」奈緒美は彩の言葉に同意しながらも、その瞳には強い決意が宿っていた。「だけど、これを突き止めなければ、村瀬の死の真相にはたどり着けない。今は少しずつでも手がかりを集めて、全体像を明らかにしていくしかない。」


その時、高橋が突然顔を上げた。「解析が終わった。村瀬のパソコンに残されていた暗号化ファイルを解読したよ。」


奈緒美と彩が高橋の後ろに集まり、彼が解読したデータを確認した。「これは…会議の議事録?どうやら何か重要な会合の内容みたいだね。」高橋はモニターに映し出された文章を指し示した。


「この内容、村瀬が関わっていた秘密の会合の記録だわ。」奈緒美は食い入るように画面を見つめた。「彼らが話していることが、今回の事件と関わっているのは間違いない。これで一気に事件の全貌に近づけるかもしれない。」


しかし、その議事録の内容はますます奈緒美たちを混乱させるものだった。「これ、暗号化された状態でも難解だけど、解読したらもっと複雑だよ。」彩が首をかしげた。「どうやって読むの?」


「確かに一見すると意味が通じにくいけど、この中に真実が隠されているのは間違いない。」奈緒美は冷静に答えた。「言葉の一つ一つに注意を払って、何を意図して書かれたのかを読み解く必要があるわ。」


「でも、これって本当に単なる記録なのかな?」高橋は疑問を口にした。「もしかしたら、これ自体が罠で、私たちを誘い込むための偽情報なのかもしれない。」


「その可能性もあるけど、だからといって引き下がるわけにはいかない。」奈緒美は強い意志を持って言い切った。「私たちは真実を追求するためにここにいる。どんなに危険が伴っても、この手がかりを見逃すわけにはいかないわ。」


その時、突然室内の電話が鳴り響いた。奈緒美が受話器を取り、聞き入ると、彼女の表情が一瞬で険しくなった。「何ですって?…分かった、すぐに行くわ。」


「どうしたの?」彩が尋ねた。


「村瀬の遺体に新たな異常が見つかったって。どうやら事件はまだまだ終わっていないみたい。」奈緒美は急いで立ち上がり、「彩、高橋、すぐに現場に向かうわよ。ここで手を緩めるわけにはいかない。」と告げた。


「また何か見つかったの?」高橋が驚いて尋ねる。


「そうみたいね。」奈緒美は短く答えた。「これで一気に事件が動き出すかもしれない。」

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