第36話 新たな手がかり
冷たい冬の朝、NDSラボのメンバーたちは、重い空気を背負いながら現場へと急行していた。村瀬正弘の遺体が発見された現場は、都心から少し離れた高級住宅街にある彼の自宅だった。到着すると、現場にはすでに多くの警察関係者が集まり、厳重な警戒態勢が敷かれていた。
奈緒美は車から降りると、一瞬立ち止まり、冷たい空気を吸い込んだ。「ここで一体何があったのか、私たちで必ず解き明かす。」彼女は静かに自分に言い聞かせ、彩と神谷と共に現場へと歩を進めた。
玄関を通り抜け、広々としたリビングルームに入ると、捜査員たちが血痕や指紋などを確認しながら証拠を集めていた。奈緒美は、現場に駆けつけていた西武武蔵野署の刈谷刑事に声をかけた。「刈谷さん、何か新しい手がかりは?」
刈谷は少し気まずそうにしながら、「ええ、ちょっと興味深いものが見つかりまして…」と奈緒美たちを地下室へと案内した。
地下室は普段使われていない物置のようなスペースだった。埃が積もり、薄暗い電灯の光がかろうじて床を照らしていた。しかし、その中央には奇妙なものが置かれていた。奈緒美がそれに目を凝らすと、それは古びた木箱で、開けると中には古い日記が詰め込まれていた。
「これが何なのか、まだ正確には分かりませんが…」刈谷は奈緒美に説明した。「村瀬の私室で見つかったものです。日記には、彼の生活の一部が細かく記録されていますが、特にこの数か月に書かれたものが、どうやら事件と関連しているかもしれないと考えています。」
奈緒美は日記を手に取り、慎重にページをめくった。「村瀬が何かに追い詰められていたような…彼は何か重大な秘密を抱えていたようね。」
「まさか、これが原因で殺されたんじゃ…?」彩が横から口を挟んだ。
「可能性はあるわ。」奈緒美は日記の一部を指差しながら言った。「ここ、『あの日、彼らとの会合が最後の警告だった…』って書いてある。これは一体何を意味してるのかしら。」
「『彼ら』というのは誰なのか。」神谷が重い声で呟いた。「村瀬は誰かと会合を重ねていたようだが、その相手がこの事件の背後にいる人物なのかもしれない。」
奈緒美はさらに読み進めながら、「この日記に、村瀬が死の直前に行った行動や、会話の詳細が書かれているかもしれないわ。これを元に、さらに調査を進めましょう。」と決意を固めた。
その時、現場にいた捜査員の一人が声を上げた。「奈緒美さん、こっちも見てください。村瀬の書斎の裏に隠し部屋を発見しました。そこには彼のパソコンが残されていて、まだ電源が入ったままです。」
奈緒美はすぐに彩と共に書斎へ向かい、隠し部屋の中に設置されたパソコンに向かった。「高橋さんを呼んで、このパソコンの中を解析してもらいましょう。きっと重要なデータが残されているはず。」
「でも、奈緒美、これって罠かもしれないよ。」彩は心配そうに言った。「もし犯人が意図的にこれを残したんだとしたら…」
「その可能性はある。」奈緒美は真剣な表情で答えた。「でも、リスクを冒さないと真相にはたどり着けない。私たちは、この事件の全貌を解き明かす義務があるわ。」
高橋剛が現場に到着し、パソコンにアクセスし始めると、画面にはいくつかの暗号化されたファイルが表示された。「これを解読するのに少し時間がかかりそうですが、何か重大な証拠が隠されているかもしれません。」高橋は真剣な顔つきで言った。
奈緒美は高橋に任せ、再び彩に目を向けた。「私たちも、他の手がかりを探しましょう。村瀬が残したものは、きっと事件の解明に繋がるはず。」
二人は書斎の中を慎重に調べ、村瀬の過去の記録や、彼が接触していた人物たちのリストを発見した。奈緒美はそのリストを手に取り、「ここに書かれている名前の中に、事件の鍵を握る人物がいるかもしれない。」と呟いた。
「じゃあ、これも全部洗い出すってこと?」彩が尋ねた。
「そうね。全てを洗い出し、事件の全貌を明らかにするの。」奈緒美は決意を込めて言った。
その時、再び刈谷刑事が現場に戻ってきた。「新たな証拠が見つかった。村瀬が死ぬ前に書いた手紙が見つかったんだ。彼が信頼していた人物に宛てたものらしい。内容はまだ確認中だが、これが事件解決の糸口になるかもしれない。」
奈緒美はその報告に、胸が高鳴るのを感じた。「その手紙をすぐに確認しましょう。きっとこの事件の全てがそこに書かれているはず。」
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