第26話 新たな殺人とパターンの発見
夕方、冷たい雨がしとしとと降り続いていた。街灯の光が濡れた舗道を照らし、道行く人々は足早に帰路を急いでいる。だが、その静かな夜の帳に隠れるように、街の一角で新たな惨劇が起ころうとしていた。
西武武蔵野署に、凍りつくような電話が入ったのは午後6時過ぎだった。無造作に置かれた電話が鳴り響き、毛利はその音に反応してすぐに受話器を取った。電話の向こうから聞こえてきた声は、震えた口調で新たな殺人が起きたことを伝えていた。
「…現場は市内のアパートです。被害者は無惨にも…」
毛利は電話の内容を確認するとすぐに刈谷に報告し、二人は現場へ急行した。奈緒美にもすぐに連絡が入り、NDSラボのメンバーもまた、現場に向かう準備を始めた。
現場に到着した刈谷たちは、すでに封鎖されたアパートの一室へと向かった。そこは、ごく普通の住宅街にある何の変哲もないアパートだった。しかし、その一室で起きた惨劇は、街の平穏を一瞬で打ち破るものだった。
「これは…」毛利が現場に入ると、思わず言葉を失った。
部屋の中には、前回の事件と同じように、外傷のない遺体が床に横たわっていた。まるで眠っているかのような穏やかな表情。しかし、その冷たくなった身体からは、明らかに生命が失われていることが感じ取れた。
「また同じ手口だ。」刈谷が冷静に状況を確認し、遺体の周囲を調べ始めた。「毒物が使われている可能性が高い。奈緒美たちが来るまで、現場を保全しておく。」
警察は慎重に現場を捜索し始めたが、今回もまた、犯人は痕跡をほとんど残していなかった。部屋は整然としており、何一つ乱れた様子はない。まるで犯行が行われた後の処理が完璧に行われたかのようだった。
「この犯人は、ますます手際が良くなっている。」刈谷は呟くように言った。「まるで犯行を繰り返すたびに、技術が向上しているようだ。」
「彼は完全犯罪を目指しているのかもしれない。」毛利は遺体に目を向けたまま答えた。「これまでの事件の共通点を調べる必要があります。犯人がどのようにターゲットを選び、どのように接触しているのか。」
その時、奈緒美と河合が現場に到着した。二人はすぐに遺体に近づき、前回の事件との共通点を確認し始めた。
「また同じパターンですね。」奈緒美は遺体の傷口を確認しながら言った。「背中に小さな針跡がある。おそらく、前回と同じ毒物が使われているでしょう。」
「これは計画的な犯行だ。」河合も同意した。「犯人は冷静で、感情を一切排除している。ターゲットを慎重に選び、痕跡を残さないようにしている。」
「でも、何かがあるはずです。」奈緒美はさらに詳しく遺体を調べながら言った。「犯人が見落とした何かが。これまでの事件と、この事件の違いを探す必要があります。」
捜査が進む中、奈緒美は遺体の手元に小さな紙切れが残されているのを発見した。それは何かのメモの切れ端であり、文字が書かれていたが、内容は不明瞭だった。まるで犯人が何かを伝えようとしているかのように見えた。
「この紙切れ…」奈緒美は眉をひそめながら呟いた。「犯人が意図的に残したものかもしれない。これが次の手がかりになるかもしれません。」
刈谷もその紙切れに目を向け、考え込んだ。「犯人は我々に何かを伝えようとしているのか、それとも挑発しているのか。いずれにしても、この紙切れを徹底的に調べる必要がある。」
奈緒美たちはその場で紙切れを検証し、そこに残されたわずかな痕跡から、犯人の意図を探ろうとした。しかし、紙切れに残された手がかりは少なく、解読には時間がかかることが予想された。
「これまでの事件と照らし合わせて、このメモの意味を解明しましょう。」奈緒美は決意を込めて言った。「犯人が次に何をするつもりなのか、その答えがここに隠されているはずです。」
現場の捜査は続き、奈緒美たちは犯人の新たな動きに対処するために、次の手を打ち始めた。彼らが見つけた小さな手がかりが、犯人との対決への道筋を示すものであることを信じて、捜査はますます加速していく。
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