第3話 彼女の名は

「この馬車の中に入れ!」





 「はぁ‥はぁ‥ここまで来れば大丈夫か…」

 アレンと少女は、牧場の近くにある馬車の中にいた。

 彼女は血が服に滲みていて、目には涙が浮かんでいる。

「大丈夫か?」

[う、うん。助けてくれてありがとう。って、あなた話せるの言葉が?さっきは話せていなかったのに。]

「ああ、女神が助けてくれたんだ。」

 今はちょっと出来ないわ。痛てて…]

「その…服大丈夫か?破られて、前側全部見えてるけど。」アレンは彼女の方を見ずに外を見ながらそう言う。

[あ!ヤバっ!]彼女は手で下着を隠した。

[ちょっと宿に戻らないと。] 

「今から戻ろうか。歩けるか?」

[ちょっと肩をかしてほしいわ。]






[この宿よ。私の部屋は2階にあるわ。]

「よし入ろう。」


 宿のロビーはソファーが7つ置けるほど広く、カウンターが奥にあり、横には部屋が広がっている。掃除も完璧にされているようだ。スタッフとかは寝ているのだろか。

「すげえ綺麗。確か2階だったよね部屋は。」


  


 二人は階段を登って2階に上がり、彼女の部屋まで来た。

[ここが私の今泊まっている部屋ね。ええと、鍵はどこだっけ……あった。]

 ガチャッ

 彼女は鍵を開け、二人は部屋に入った。



 部屋はそれほど大きくはなく、家具は大きめのベッドが1つある。ベッド付近の床には物が置いてある。多分彼女の物だろう。い。木製のテーブルとクッションが付いた椅子が2つある。窓からは外の景色が見える。テーブルの上には果物や紙、羽ペンが置いてある。

[あなたはここで泊まっていいからね。]



[えっと、どこだっけ…見つけた。]

 彼女はベッド付近にあった荷物の中からビンを取り出してそれを飲んだ。


「何を飲んでいるんだ?」

[栄養ドリンクよ。魔力を回復させる力があるのよ。何か飲む?]

「んー水はあるかい?」

[ちょっと待ってて。]


 彼女はコップを持ってきて机に置いた。それ以外は何もない。

「なにも入ってないぞ?」

[まあ、見てて。]

 彼女はベッドにあった杖を持ってきて、そのガラスのコップに杖を向けた。すると、杖の先から水が出てきた。

[すごいでしょ。]

 アレンは驚いて少しの間言葉が出せなかった。

「こ、これが魔法か。」

[前にこの魔法を覚えられる本を買ったのよ。これ飲んで落ち着いて。]

 アレンは言われた通りに水を飲んだ。

「ん、何も変哲もない水だな。ただただ美味しい。」






[落ち着いた?]

「うん。」

[まだ名前を言ってなかったね、私の名前はイリス、イリス・オリヴィア。イリスって呼んで。あなたの名前は?]

「俺の名前はハリーアレンだ。アレンでいい。」

[アレン、あなたこの世界の人じゃないんでしょ?どうしてこの世界に来たの?]


「ああ、それは…」

 アレンはこの世界に転移するまでの顛末ををすべて話した。



[あなたの他に二人もこの世界に転移したのね。]

「だから俺はあいつらを探して、この世界から出たいんだ。」


[じゃあ、この国について、何も知らないわけね。]

「ああ。できればなにか教えてほしい。」

[魔法の事は後で教えるとして、何から話そうか…まずこの国の説明ね。この国はエルドリアといって、ここで魔法が生まれたのよ。 エルドリアは相当大きな国で、今この街は西の端っこに位置しているの。王都、まあ一番栄えていて、この国の政治をするところが東の端っこにあるのよ。あなたはどこを目標にしているの?]


 アレンは自分が何を目的にしているか考えた。

「とりあえず色々な街に寄りながら王都に向かってみる。大体王都までどのぐらいかかる?」

[3,4年前だったら2日程で行けたけど、今は寝ずにノンストップで行ったとしても60日ぐらいかな。]

「寝ずに行っても60日か。昔はなんで2日ほどで行けたんだ?」 

[昔は栄えてる街には王都や他の街にテレポートできる魔方陣があったんだけど、色々あって今は無くなってしまったのよ。無くなったというか使えなくなったの方が正しいかな。この国について知りたいならこの本をあげるよ。]


 アレンはイリスから本をもらった。名前は「エルドリアについて。」300ページほどの本だ。

[3年前に買った本よ。情報は古いかもしれないけどり文字は読めるの?]

「まあ所々は読めない所もある。」

[それなら分からない単語などは教えてあげるよ。]

「ありがとう。」





「そういやさっきの男は?」

[エルドリアを支配している軍がいて、この街を監視している軍の人があいつ。さっきの魔方陣が使えなくなった理由はこの軍が廃止させたんだよ。こっちの西部は支配が強くはないけど、王都の東部は支配が強いんだよ。徐々に西部にも進行してきてるから、それを見てこいって国から命じられたんだよ。いつかはルミナ大陸を支配しようとしてるらしいよ。あ、ルミナ大陸はエルドリアが属してる大陸の事ね。]


「その軍に支配されていて、国民はどうなんだ?」

[生きづらい世の中になりつつあるね。思想の統制がされていたり、なんか変なことをしたら捕まって拷問されるんだよ。改心したら釈放されるけど、2回捕まったら殺されるよ。]




「イリスは大丈夫なのか?」

[結構危ないよ。一回捕まりかけたこともあるし。だから私はこの街を早くでないと。顔がバレてる。]




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 冷静に考えなければ。これから俺はどうする。仲間を作らないと、単身だと動きにくい。イリスは着いて来てくれるか頼んでみるか?

 この国を支配している軍か…そろそろ眠くなってきた。


「少し寝ていいか?」

[いいよ。私も寝る。よかったらベッド使って。] 


























































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