第2話 女神ナトア

 「あの人は寝ていたのか。でもなんであそこで?」 

 アレンは彼女の所から離れ、広場から西にある公園の大樹の下で座っていた。

「言葉が理解できないのは致命的だ。何かしら方法を考えないと。言葉がわかったとしてもその後どうする?1人で探すのは負担が大きすぎる。親も心配してるかな…犬だっているのに。何日位で戻れるかな…サッカーも観たかった…」アレンは考えていると、眠りにおちてしまった。


《アレン、目を覚ましなさい。》

「何でいつの間にこんなところに?」アレンは目を覚ますと大樹の頂上にいた。

「誰だあんた?」

《私は女神です。名前はナトアと申します。》

 アレンの目の前には神々しく美しい緑髪の女性がいた。

「なぜ女神なんかが俺の前に現れる?」アレンの横にいる女神に話しかける。

《困っている人を助けるのが私の仕事です。あなた、何か困っていますね?分かりますよ。》

「よくわかったな。実はいま、この世界の言葉がわからなくて…って何で今俺と話せるんだ?」

《私は女神ですよ?そのぐらい簡単なものです。あなたはここの言葉が分からないのですね…ええと、率直に言えばなんとか出来ます。》

「出来るのか?方法はなんだ?」

《私の所に来てください。そうすれば、女神の力でなんとか出来るでしょう。今は力が足りません。》

「分かった。どこに行けばいい?」

《自分で探して下さい。神は皆を見守っています。》女神は俺を大樹から突き落とす。

「まじかよ!?死ぬって!?」



「はっ、なんだ夢か。」








 「ナトアか。緑色の女神…とりあえず女神がいそうな所を探すか。教会とかか?」

 アレンはまず教会らしき建物を探して歩く。

「こっちは家とかが多いな。地図とかはないのか?さっきの広場に戻ろう。」



 アレンは広場に戻った。さっきの女性はまだベンチにいた。

「まだいるのか…広場の奥に掲示板みたいのがあるな。」



 掲示板には写真やカレンダーがある。今後の予定が書いてあるのだろうか。その横に地図がある。大体のこの街の情報が書いてある。地図の上に多分この街の名前が書いてある。の街と言うより村と呼ぶ方が方が近い。そんなに大きくない街だ。

 奥にある大きい建物の近くに教会っぽいマークが書いてある。そのマークの下に言葉が書いてある。

「キル…その後が読めない。まあ、そこにいってみるか。」





「ここか。お、鍵が掛かってない。入ってみるか。」

 

 教会の中には誰もいなかった。

「中も結構綺麗だな。」 外見は緑色で屋根は赤色のレンガ、中は落ち着いた雰囲気で、ステンドグラスには何かの絵が書いてある。人が30人ぐらい入れる規模感だ。

 アレンは祭壇へ向かい、祈ってみる。

「女神よ、出てきて下さい…」

 …

 何も起こらない。

「ここじゃないのか。違うところを当たろう。」



「緑髪の女神…緑から連想出来るもの…自然だ。自然を探そう。」



 この街には自然がある。街を縦断するように川があり、奥には森がある。農場だって結構な規模でやっている。

「とりあえず一つ一つ探していこう。」

 アレンは最初に川の、神がいそうな所を探しに行った。

「この川、きれいだな。」

 水が透き通っていて、流れも激しくはない。水の流れる音が心地よいぐらいだ。

「こんな所に女神なんて居ないよな。もっと特別っぽいところにいるだろう。川の上流に行こう。」



 川の奥には滝があり、そこから流れ出た水が川に合流している。水が落ちるときに相当大きい音がするが、ここの住民がいるところからは離れているから大丈夫だろう。滝の周辺には森が広がっている。

「すごい迫力だな。あれ、滝の下に何かある。」

 滝の水が落ちるところだけ、水深が深くなっていて、

 水中の奥に何か場所があるように見える。

「入ってみるか?でも服が濡れるのはなあ。待て、水の神なら髪も青色とかだろ。なら違くはないか?」








「はあ、どこに居るんだよ女神!」

 アレンは滝の近くにある森を歩いている。

「探す所は探したぞ。後他に何がある?」

 1人で話しながら森を歩いていると、何か道のような

 ものがあった。その道はこの森の奥につづいている。

「なんでこんなところに…道をたどってみるか。」

 8分ぐらい歩いただろうか。街はもう見えない。

「森も自然だから、神がいる可能性もあるな。女神がいることを祈る。」

 そんな淡い期待を抱きながら歩いていく。








「何も無いぞ…?」

 建物など何もなく、目の前には何故か色々な鮮やかな花が円状に広がっている。さっきまで花なんて見なかったのに。

「ここだけ花…何かあるぞ…そうだ!ここに女神がいるんだ!」

 アレンは両膝を地面につけて、目を閉ざして祈る。

「女神よ、来たぞ!」

 …

 …

 …

 目を開けると、周りが緑色の光で包まれている。

《…アレンよ…ようやく来ましたね…》

 夢で見た女神が目の前に現れた。

「ああ、大変だった。」

《ここの言葉が分かる能力をあなたに与えるのでしたね。承知しました。では、付与致しましょう!》

 女神はアレンの方に手を伸ばす。すると緑の光がアレンを包む。

「なんだか、花畑にいる気分だ。」

《能力を与えました。これであなたはここの言葉が分かるようになるでしょう。あともうひとつ、この石を授けましょう。》

 女神はアレンに緑色の石を渡した。

《この石は一回しか使えません。使うときは地面に置くのです。》

「ありがとう女神!」

《さあ行きなさい。神のご加護がありますように。》





 













 アレンは石を空中に投げながら遊んで広場まで歩いていた。

「青髪の人まだいるかな。聞きたいことがあるんだけど。」


 広場にはさっきの青髪の女性がまだいるようだ。そしてさっきはいなかったが、男が1人いる。

「こんな時間に外にいるのは怪しいな。さすがに寝てるだろ。」

 草の中に隠れながら見ていると、彼女と男は何か話していて、少し聞こえる。



 <2時からは外に出る事は禁止って軍の規約を見てねえのか??>

[いえ、見たことないわそんなこと。]

 <生意気な女には罰が必要だな!>


 その男は彼女の服を手で破り、殴り飛ばした。彼女は破られた服の下の肌が見えていて、床に倒れてうずくまり、男は彼女を蹴り続ける。




「やばいやばい!あの子血がでてるぞ!今石を使うのか!」

 アレンは石を床に置いた。すると石は割れ、声が聞こえてきた。この石は精霊の石だったようだ。

(…あなたの左側に武器屋があるわ!そこに銃があるからそれを使ってあの男に銃を撃ち込むのよ!)

「そんなん無理だろ!銃って訓練とかしないと上手く扱えないだろ!って魔法世界なのに銃かよ!」

(私が手助けをするから!早くしないとあの子が危ないわよ!)

「わかった。今だ!」

 アレンは走って武器屋までいって銃をとった。

 <おい!誰か居んのか!>

「弾はあるか、いくぞ精霊!」

 アレンはスライドを引いて狙いを定める。

 そして、トリガーを引いた。見事に足に命中し、男は崩れた。

[痛った!誰かいるのか!]

 アレンは隠れてスライドを引き、見えるギリギリで打ち込んだ。精霊のお陰でまたも命中し相手はダウンしている。アレンは少女を助けるために駆け出した。

「大丈夫か?早く逃げよう!こっちだ!」

 彼女の手をつかみ、男が弱ってる間に走って逃げ出した。

 

 あの男は誰なんだ?

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