第4話:ネルはあんたのもの。
なんで見ず知らずのガイノイドの面倒見なきゃいけないんだろ?
しかも声と脳みそだけと生活してもつまんないだろ・・・。
ってことでネルが連絡を取ってくれた、
って言ってくれた。
彼に相談するのはネルの
つまり脳殻が入っていても入ってなくてもいいからちゃんとしたガイノイドの
体があればいいんだ。
だけど、そのために費用がどのくらいいるのかも分からない。
まずは話を聞いてもらってから今後のことを決めようと思った。
休みの日、一宮さんの行きつけのラーメン屋で昼飯どきに合うことになった。
ラーメン屋の暖簾をくぐったら数人の客がカウンターに座っててその中の
ひとりがネルが言ってたとおり髪の毛がもじゃもじゃでメガネをかけた、
若そうな男がすでにラーメンを食べていた。
俺はその人に近ずくと声をかけた。
「あの、一宮さんでしょうか?」
そのもじゃもじゃ頭の男は俺のほうを見ないで、うんうんうなずいた。
この人か・・・。
「横に座っても?」
「どうぞ?」
「すいません・・・俺も味噌ラーメン」
「あの一宮さん、だいたいのことはネルから聞いてると思うんですけど」
「金さえ払ってくれたら、協力してあげてもいいけど」
「とりあえずラーメン食ってから、すぐ先に公園があるんでそこで話しましょう」
「あ、はい分かりました」
《マサキ?・・・マサキ・・・どうなった?》
いきなりスマホからネルの声がした。
「まだ早いよ・・・話が終わったら知らせてやるから待ってろ」
「ネルが割り込んでくるとややこしくなるからしばらく黙ってな」
「あとでな・・・大人しくしてろよ」
ラーメンを食べ終わった俺たちは代金を払って外へ出た。
当然のように一宮さんの分のラーメン代も俺が払った。
頼みごとがあるほうが、なにかと立場が弱くなるもんだ。
ラーメン屋からしばらく歩くと一宮さんが言ったとおり小さな公園があった。
その公園で俺たちは今にも壊れそうなベンチに座って話した。
昼間の公園は閑散としていて幸いにも周りに話を聞かれるような人もいなかった。
「その君んちにいるネルっていう子は僕が勤めてるラボにいた子でしょ」
「脳殻だけ残ってるって聞いたけど・・・」
「そうなんです、なんかですね」
「本当は脳の中身は消されて破棄されるはずだったみたいですけど手違いで、
データ残したまま捨てられたみたいで・・・」
「で、俺のスマホに侵入してきて助けに来てくれっていうから・・・」
「悪いとは思ったんですけどオタクの会社に潜り込んでネルの脳殻を回収して
来たって訳です・・・」
「それってやっぱりダメなんでしょうかね・・・会社の所有物ならネルの
脳殻は返さなきゃいけないんじゃないですかね?」
「持っててもいいんじゃないの、別に・・・脳殻はもうあんたのもんだよ」
「元ガイノイドだったネルの脳が新しい脳に入れ替わった時点でさ、脳殻が
破棄された時点で会社のメインコンピューターから彼女の登録データは
新しいデータに上書きされただろうからね」
「だから彼女の脳殻はもう会社のものでもないし・・・誰のものでもないと思うよ」
つづく。
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