35.すぐに目を逸らしてしまった。

 アガサが魔導院にいる、もちろん制服を着てだ。

 なぜ彼女が?

 僕の頭は疑問符で一杯になる。


 ジュリィが「あの子は知り合いですか、マシューくん?」と問うてきた。

 僕は「はい」と応える。


「僕の故郷の幼馴染です。でもなんで魔導院に」


「ふうん……10歳のステータスで魔法スキルを授かったというところでは? 積もる話もあるでしょう、私たちのことはいいので、マシューくんは彼女のところへ行ってあげてください」


「そ、そうだね。ありがとうジュリィ」


 僕は「それじゃあ、そういうことだから」と断ってから僕は侯爵家の面々から離れ、アガサのもとへ向かう。


「2年ぶりだね、アガサ」


「うん。マシューは背が伸びたね」


「それはアガサもだろう?」


「うん」


「どうして魔導院に?」


「ステータスを授かったときに、魔法スキルが3つもあったの。それで大人たちが大慌てで領主様に知らせて。なんかね、魔法スキルが3つ以上あった者は領主様に届け出なきゃならない決まりがあるんだって」


「そんな決まりがあったの?」


「うん。それで私、すぐに村から領主様のお屋敷に移って、住み込みで魔術を教わったり魔導院の入試の勉強をしたりさせてもらって。無事に合格したから、今は領主様……ラステッド男爵家の後援を受けて寮にいる」


「そうだったのか……」


 素直に驚いた。

 多分、僕の聖獣ソフィアが敢えて秘密にしていた情報がコレだろう。

 アガサとの再会か、確かに僕に害のある情報じゃないし、凄く驚かされた。


「首席合格者がマシューっていう名前で、もしかしてって思ってたけど。壇上で挨拶する姿を見て私が知っているマシューだって分かったから。思わず声をかけたんだけど……」


「だけど?」


「…………あの4人って、上級貴族の人たちだよね? 今のマシューってどういう立場なの?」


「僕はアレクシス伯爵家の後援を受けているだけの平民だよ」


「そっか、良かった。私と一緒だね。それでなんでマシューがその、あんな凄い人たちと一緒なの? 首席だから?」


「ううん、そうだな。どこから話すべきかは分からないけど、確かに僕が首席だから付き合いができたところはあるかな。僕の後援をしてくれているアレクシス伯爵は、この魔導院の教授のひとりで有名なんだよ」


「教授って確か教師より偉い人だよね」


「アガサ、もしかして魔導院についてそんなに詳しくないの?」


「え、違ったの?」


「ええといや、僕もアレクシス伯爵家に来るまでは何も知らなかったから人のことは言えないけど。今度、いろいろと教えるよ」


「うん。もういつでも会えるんだよね?」


「うん、いつでも会える」


 僕のことを見つめるアガサ。

 僕もアガサのことを見つめる。

 なんだか昔はお互いに見つめ合うだけで心がポカポカしていたのに、今は気恥ずかしさが上回って、すぐに目を逸らしてしまった。

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